生徒たちが一年生の最後の授業で、マンオブザフェイントのTaku君がやめると涙の挨拶をした場所も十五中でした。そんな懐かしい思い出が浮かんでくる心のホーム(ずっと倉庫近くの空間を占拠して集中した練習ができました)が奇しくもコーチの最後の授業の教室となりました。長くなりますが、自分のことを書かせてもらいます。
豊中市民ではないコーチが何故12年も豊中ラグビースクールのコーチを続けたのか。2001年海外勤務から日本に戻り、大学のOB戦に久しぶりに参加した際に出会った先輩がスクール指導員だったことから子どもをスクールに入れたという偶然。そのときからお世話になった娘がラグビーにはまり、高校生で日本代表に選ばれるという僥倖(ぎょうこう)。それで十分だったのかもしれませんが、もう一つおまけが用意されていました。われらがスクールの歴代校長の中で母校(北野高校)の生徒を花園に導き2万人を超える観客を動員した(花園のスタンドの下で焼肉を焼いて観客から臭うと騒ぎになりかけた「事件」も起こしたとかいう)J校長に十五中の練習を観ていたところで、「指導員やらへんか?」と声をかけられたのが運のつき(いい意味で)。翌週からどっぷりと指導員人生を歩ませていただける嚆矢(こうし)となりました。
2年間の試用期間を経て、今日練習に参加してくれた高校一年生の教え子3人を含む20名以上の生徒を一指導員としてコーチングし、6年生の時の京都成章高校杯の3位入賞、花園卒業試合で強豪アウルさん、過去大敗した兵庫県RSさんに全員出場で勝利し、有終の美を飾ることができ引退も考えました。ところが、やはり同じ十五中の最後の練習時、幼年年長組の人数に圧倒されてコーチを続けることを決めました。
そこからが自分にとってコーチとして大切なことを沢山学ばせていただく貴重な4年と7か月になりました。その間読んだラグビー関連本、ビジネス、自己啓発本数は300冊を超え、紀伊国屋書店の売上とブックオフの品揃えにかなり貢献したのではないかと思います。一年生の第一回目『よっしゃいくぞ!一年生!!』のタイトルとして漫画ワンピースのルフィが海賊王になると決めて航海に出るとき発声した言葉から拝借した以外は、漫画ではありません。ただし、三年生のときに生徒・コーチ名鑑を保護者で作られたときのコーチコメントは、漫画スラムダンクから引用、改変しました。今読み返すに懐かしい。
S1:「オレは最後まであきらめない男だ!!」その通り、今ではフォワードの守護神としてチームを支えてくれています。
T2:「本当の挑戦はここからだ 技術も・・・ 気力も・・・ 体力も・・・ 持てるものを全てこのグランドにおいてこよう」全部置いていってくれたら野球やってよろしい。
Y3:「なんぴとたりともオレの眠りを妨げる奴は許さん(昨年の夏合宿部屋がうるさく眠れなくて)」今日は目の覚めるタックルの連発でA1昇格おめでとう。英検合格もすばらしい。コーチのように海外でラグビー仲間を増やそう!
K4:「お前のためにチームがあるんじゃねえ チームのためにお前がいるんだ!!」最近はFor the Teamの動きが出てきたね。
Y5:「豊中にいいリズムをもたらしているのはキミだ」ほんと、今日もいい雰囲気を醸し出していたね。今度の試合でもそのリズムだよ。
S6:「オレはもうあの6番を止められねえ 走ることも・・・ 抜くことも・・・ 何もできねえ・・・」大怪我して自分のことになっちゃったけど、またディフェンダーを釘付けにする走りでチームを引っ張ってな。
H7:「試合前に恐怖心は誰にもあるもの それから逃げずに受けとめ そして乗り越えた時に初めて理想の精神状態にたどりつける」ガッツを秘めた男だって知ってるからね。一歩一歩前進だ!
K8:「オレに今できることをやるよ!!やってやる!!」彗星のように現れてこれまで大活躍だったね。ラグビーノートも理論武装が進んでいるようで、これから益々磨きがかかるね。
H9:「キミならきっと なんとかしてくれる・・・!!そういう目をしている・・・!!」先週の高槻戦はまさになんとかしてくれたね。T18の不在中ゲームキャプテンを頼む。
S10:「『負けたことがある』というのがいつか大きな財産になる」今は成長の過渡期でつらいかもしれないけれど、君の高度な思考能力は必ずチームの力になる。
A11:「自信をもて!!お前に勝てるヤツなどいない!!」怪我から立ち直り、最近自信がついてきたね。新しい主任コーチを単刀直入な言い方で困らせないように。
K12:「ディフェンスに定評あるキミを!」お兄ちゃんばりのハードタックラー完成まであと少し。通うのが遠くて大変だけど頑張れ!
H13:「ラグビー選手になっちまったのさ・・・」ほんと、三代ラグビー一家になっちまったね。切れ味はNO1。ラグビーでその切れ味を活かそう!
S14:「日本一の選手ってどんな選手だと思う・・・きっとチームを日本一に導く選手だと思うんだな オレはそれになる 一歩も引く気はねーぜ」病気でラグビーできない日々が続くけど、君はチームを日本一に導く選手。治ったら全部出し切ろう!
R15:「ハッ ハッ ハッ 天才爆発!!」流れるもの→桃の発想ができる君は天才だ!思ったとおりにガンガン行ったれ!
K16:「うむ。きれいなフォームだ。」めざせ次世代のオリンピック!S14父さんの今日のモールディフェンスはきわどかった。。。
Y17:「タックルした後 あれだけのダッシュは並じゃできねえ」あの激しい1試合二桁タックルをもう一度見たい。お父さん急なお仕事入らないですかね。
T18:「全国にはもっと上がいるかも とりあえず君は日本一の小学生になりなさい アメリカ(ン)はそれからでも遅くない」今でもコーチは同じ思いです。怪我を治して、新たな壁を突き破れ!
M19:「なすすべなく抜かれてそのままにはできねーさ 負けず嫌いなんだ あいつは キョクタンに!」一年生のときマンオブザマッチ初受賞して嬉しそうだったね。コーチの見立て通り凄いプレーヤーに成長したよ。まさに小さな巨人だ。
K20:「そろそろ自分を信じていい頃だ・・・今の君はもう十分あの頃を超えているよ」怪我も癒え、また一段と大きく見えてきた。その「予測力」で人生を華麗にデザインしよう!
R21:「ゲームそのものを楽しむことを・・・もうずっと忘れとった気がする・・・あきらめるのは早い・・・勝つで勝ったほうが100倍楽しいもんな」合宿からほんとゲームを楽しんでるよね。あのタックルは一生忘れないよ。
J22:「そのでかい身体はそのためにあるんだっ!!キミは秘密兵器だから」6年生まで温存しておくとする。
M23:「さっさと続きを始めるぞ!俺の気持ちが冷めないうちにな!」熱い気持ちで仲間を見たってな。寝っ転がってなくて。お父さんのラグビーみたいにな。今朝パパがボール取ったとき目が光ったで(キラッ!)。
R24:「おじいちゃんの栄光の時代はいつだよ・・・全日本のときか?オレは・・・オレは今なんだよ!!」一年生のときキャプテンに指名しておいてよかったと今つくづく思います。自主練も続ける君ならおじいちゃんを超えられる!その前に父ちゃんを超えよう。
S25:「負けてない!誰にだってオレは負けてないぞ!!」体力測定3冠王の金字塔はいまだ破られず。最近プレーに硬さが取れて、「遊び」ができてきた。よい兆候。
R26:「本物のトライゲッターは練習によってのみ作られる!!」チーターのようなスピードをさらに磨いて世界のウィンガ―になって欲しい。
K27:「初心者だけど・・・いつか 豊中の救世主になれる人かも知れないよ」コーチは今も信じています、メシア信仰。
E28:「2年間も待たせやがって」三年生から転校してきてだんだん大阪の空気にも慣れてきたね。爆発まであとわずか。ドカーンと行かんかい!
ここからは新作です。
H29:「待ってるから 大好きなラグビーが 待ってるから」チアーもレスリングもきっと楽しいけどラグビーも楽しいよ。あの柔らかさは半端じゃない。
T30:「ちょっと頭きて・・・やっちまいました」果敢に相手に向かっていく根性は天下一品。人の役に立ちたいという気持ちの表れと見た。ワールドピースゲームで国の首相がいなくなったときは参った。
K31:「俺は俺の仕事をする!この試合に悔いは残さねえ!」今日の低いタックルが仕事人の風格を醸し出していたよ。格闘家のパパは完走できたかな?
H32:「感情的になるな・・・まだ何かを成し遂げたわけじゃない なぜこんなことを思い出してる」試合の後の大粒の涙がきっと君を成長へと導くと思う。
K33:「ゆっくりでもいい。自分の力でやり遂げろ!」スクールに体験で一緒に試合をしたとき、泥んこになっていやになったかと思ったら入ってくれて嬉しかったよ。空手も上達してきたようにラグビーもこれから伸びてくるよ。
D34:「初めてトライ決めたのはいつですか?将来、絶対聞かれるよ・・・」今日も大人相手にナイストライだったね。お父さんみたいにでっかくなろう!
K35:「もっと・・・もっと ホメてくれ」夏合宿で毎晩君と布団の上で知的なおしゃべりをするのが楽しかったな。ラグビーのことをいっぱい教えて、できるようになったらいっぱい褒め倒したかったよ。イメージキャプテンに選ばれた時のガッツポーズが忘れられない。
こんな生徒35人が今日は34人も集まってくれて、全員対コーチの対戦はイナゴの大群のように迫力があったよ。紅白戦も白熱していて明日のスクール大会という発表会はこれまでの練習で学んだことを存分に披露してくれると感じました。
そんな仲間たちを3つのチームに分けるのはコーチとしてつらい瞬間だったけど、与えられたチャンスと捉え全力で今と向き合ってください。
A1(大工、寝屋川×阿倍野の勝者と決勝):S1、T2、Y3、K4、H9(ゲームキャプテン=GC)、R15、M19(チームキャプテン=TC)、J22(イメージキャプテン=IC)、M23、R26
A2(東淀川、交野×箕面の勝者と決勝):Y5(GC)、K8、S10、A11、K12、Y17、K20、R21(IC)、R24(TC)、S25、E28
B(四条畷、富田林と三つ巴戦):T7(TC)、H13(GC)、K16(IC)、K27、H29、T30、K31、H32、K33、D34、K35
この練習日誌に毎週の練習や合宿で感じたさまざまな気づきを書き続けてきました。最後にコーチが言いたかったことは、今日の次に明日が来て、その先にも新しい日が待っている。そうやって当たり前のように人生は続いていくと考えがちです。しかし、これからもずっと続くと思っていた人生には必ず終わりの時がやってくる。じゃあどう生きるか。
コーチは、そんな限りある人生なら、ただ安定を求めるのではなく、機会(チャンス)を求めたいと思います。そのために自分はこうありたいという願望を明確にし、その願望を達成するために夢を現実に変えていきたいと思います。表題の本は、私が最も影響を受けたナポレオン・ヒルという講演家が書いた本で、600ページに及ぶ大作ですが、強い意欲を伴った願望は奇跡を生むということを夢を持つ万人に伝えたかったのだと思います。コーチとしての夢(チームがひとつになること)は今日叶いました。次は生徒たちが強い意欲でそれぞれの夢を叶えさせる番です。一年生の最後に取り上げた本『最後の授業』の一節を記して、コーチの日誌をひとまず閉じることとします。長きに亘って冗長な文をお読みいただき感謝申し上げます。
夢をかなえる道のりに
障害が立ちはだかったとき、
僕はいつも自分にこう言い聞かせてきた。
レンガの壁がそこにあるのは、理由がある。
僕たちの行く手を阻むためにあるのではない。
その壁の向こうにある「何か」を
自分がどれほど真剣に望んでいるか、
証明するチャンスを与えているのだ。