今週も梅雨というのに快晴に恵まれて、学校行事などで欠席の4名を除いた31人が頭と体を鍛える練習を行いました。先週悲しみの学校行事参加で休みだった生徒はラグビーノートに身体的な弱さ(コーチはそうは思ってないが)を「頭を使って」補いながらラグビーをうまくなりたいということを書いていました。四年生ながらノートを提出する生徒はそれぞれ異なる視点でラグビーについて書いています。タックルの仕方、ステップの種類などを調べてくる生徒もいれば、先週の試合で悔しかったこと、楽しかったことを書いたり、コーチの説明を図や表にしたりと工夫を凝らしています。今日初めてノートを提出してくれた生徒は、ラグビーを始めたばかりで何を書いていいかわからないと前置きし、自分のスポーツに対する恐怖心について正直に書いていました。最後は、「でもやっぱりこわい気持ちをぶっ飛ばしたいです」とゲンコツの絵を描いて恐怖心を克服しようとする力強い意思表示で締めくくっていました。将来、恐怖心を克服して素晴らしいプレーヤーになったとき、最初は誰でもこんな気持ちからスタートするんだという好事例としたい初心表明文でした。
「頭を使うラグビー」とあったので生徒たちに以下の問題を出しました。
【問題】
9つの点が正方形の頂点と各辺の中央および対角線の交わるところにあります。これらの点すべてを、一筆書きの直線で結びなさい。ただし、線が折れていいのは3回だけ。
5か国に別れて難問を国民全員輪になって相談しながら解いてもらいましたが、正解はありませんでした。大人で10分の制限時間ですので、3分は短すぎたかもしれません。
種明かしは後にして、身体を動かす練習の開始です。まずは、2人1組で基本的なストレートランをしながら、交互に3メートル毎投げられてくるボールをキャッチし反対側にパスする練習から。ハンドリングスキルも大事ですが、まっすぐ走ること、動きながらボールをキャッチする感覚を鍛えることに重点を置いています。ミスを恐れてスローになる生徒も多かったので、最後は「ピラミッド」で3チームが全力ダッシュ競争をしました。3メートル毎にダウンボールで前進して30メートル先までボールを積み上げます。頂点に達したら、今度はピラミッド崩しでスタート地点にどのチームが速くボールを戻すかを競うものです。優勝したファルコンズ主体のチームはルールに忠実で統制が取れていましたが、他2チームはルールをいかに破るのかに一生懸命な生徒がいてバラバラでした。
今日は、新しく入った生徒がわからないまま数か月試合をしてきてイメージが徐々につかめてきたところで、タックルの定義と、タックラー、タックルを受けたプレーヤーのやっていいこと、いけないことを段階を踏んで説明しました。あとで理解度チェックしたところ、初めての生徒もスラスラ回答してくれました。
ボールキャリアーが、一人または複数の相手プレーヤーに捕まり地面に倒された場合に、タックルが成立する。捕まえられていなければ、「タックルされたプレーヤー」とはならず、したがってタックルは成立しない。
「地面に倒される」って具体的にはどんなこと?H9の頭脳が回転し始めます。そうだね。
ボールキャリアーの片膝または両膝が地面についた状態だね。もちろん地面に腰を下ろしてもタックル成立だね。
ではタックルしたプレーヤーはどうしないといけないかな?R15がすかさず「離れる!」。そうだね。これをせずにボールのそばに寝てたら?S6が「ノットロールアウェイ」とさらり。英語で来たか。優秀優秀!他に許されていることは?
S14、「ボールを取る」、正解!もう一つは?
ここはそれを得意とするT18が「オーバーする」。ラグビーのルールブックの素晴らしいところは、「してはいけない」「~しなければならない」と制限を加えながら、では何が許されているのかについては詳しく説明していなかったり、選択肢を与えていることです。そこにプレーヤーの創造性あるいは、校長のいつもおっしゃる「フレア(奔放な発想)」が生まれる可能性を残しているのだと思います。その昔、フランスが五か国対抗(古いか)で、相手キックオフのボールがダイレクトタッチになったときフレンチ(ベルビジェだったか)がとった行動は今でも脳裏に焼き付いています。レフリーが習慣的にハーフウェイラインの中央に向かおうとしたところで、スクラムハーフはフレンチのフォワードをハーフウェイのタッチ沿いに集めたかと思うと、ボールを投げ入れ、そのままフォワードが一直線にトライ。当然相手側はインチキだといった様子でやり直しと思っていたのでしょうが、レフリーはそのままトライを認めました。「フレンチフレア」の神髄を垣間見た瞬間でした。
では反対にタックルを受けたプレーヤーに許されていることは?
この問いも「すぐにボールを離す」「パスする」といった正解がポンポン出ました。他には、思いつかなかったようなので、「転がす」ことも許されているよと答えを教え、どんなときに転がすのかを実際のケースで説明しました。また、倒されてすぐであれば、「リフト(ボールを上に掲げる)」し、サポートプレーヤーに繋いでもOK。
タックルの意味を頭で学んだところで身体を使ってひざ付タックルを行い肌感覚を養いました。
一汗かいたところで先ほどの「ナイン・ドット・パズル」という1世紀近く前から存在したというなぞなぞの回答を実際に3メートル間隔でコーンを置いた碁盤の目をコーチが走ってみせました。答えがわかった生徒に確認テストとして走ってもらいましたが、皆迷わず三回ターンして9つのコーン上を通過しました。おうちのかたには、説明が難しいのでお子さんに聞いてください。もう既に問題を出して得意顔だったかもしれませんが。
最後の国別対抗ミニゲームで印象的だったのは、K20とR15の悔しさを表わす表情でした。前者は、ゲーム中に何度もボールを持って前進を試みようとする積極性が最近出ているなと思っていましたが、ゲームに負けた悔しさを涙で表現していました。この子は強くなれる!もう一人の生徒は、今日も二試合目で外されて泣きそうな顔をしていました。コーチはうっかり「お前ひとりのラグビーじゃないぞ」というトーンでなだめようとしたら、「タカトセブンズのビー玉がもう無いねん」と国のために自分がゲームに出て貢献しなければ国の未来はないという苦境に悔しさをにじませていたのかとコーチの浅薄さに恥ずかしくなりました。
ナイン・ドット・パズルの謎解きから始まる表題の本は、枠(9つの点の内側)の中だけ考えたら創造的にはなれないということを言いたいのかと勘違いしてしまいます。(この正解は枠の外に出て折り返す)
しかし、この本でいいたいことは制約の中にこそ答えはあり、過去の成功した発明は制約の中で創造的なアイデアから生まれたと力説しています。それも5つのテクニックを使えばだれでもその思考法がみにつくといいます。
R15や他の負けがこんでいる国の生徒は、メンバー分けに不満を感じていることでしょう。しかし、そんな制約の中にこそ、チームが強くなる秘密が隠されていると思います。ファルコンズに勝ったドラゴンコシヒカリもその例。制約の中で何か新しいものを創造してさらに大きく成長して欲しいものです。