一年生の『三枚のお札』

心配されていた天気も何とか持ち堪えてくれ、今日は久しぶりに芝の上でスクール大会直前練習ができました。やはり、芝で裸足になってはしゃぐ生徒の笑顔が一番です。最後のミニゲームでの追いタックルで激しく胸から倒される場面が多くありましたが、鼻血を見ず、生徒はけろっとして起き上がっていました。今日も早くから熱心なお父さんが生徒へ特別メニューを施していらっしゃる姿があり、コーチとして嬉しい限りです。コーチの持ち時間は週2時間しかお借りできません。後は「父親力」にお任せするしかありません。単身赴任のお父さんも持ち時間が限られ大変ではありますが、我が子と一本でも多くキャッチボールしてあげてください。

今日も抱腹絶倒の2時間でした。春の入学式から半年余りで一年生は大きく成長しました。そんな生徒達に、コーチは「3枚のお札」を手渡して、どうにか秋の本格的なシーズンインまで引率してきました。そのお札にはこう書いておきました。「準備」・「目標」・「勇気」と(青森県の昔話「三枚のお札」のあらすじにご興味にある方は、最後までお読みください)。ここまでは、コーチの3枚の札で全員スクールをやめることなく、なんとか壁を乗り越えられました。ここからさらに大きな壁を乗り越えるには4枚目のお札が必要だと思います。しかし、そのお札をコーチは持っていません。どこにあるかと言うと、そのお札は生徒全員が一つになったところにあるのです。そのお札とは、いったい何でしょう。

昨晩、コーチ全体のミーティングが福祉会館で行われました。そのミーティングでは、各学年のコーチの皆さんがこれまでの練習方法、悩みなどを忌憚なく発言され、豊中RSが今後どうあるべきかについて活発な意見交換がなされました。ミーティングの最後のまとめとして、長く小学生教育を現場でなさって来られたF先生のお話が参加者の多くに共鳴を呼びました。そのお話は、「豊中の生徒は総じて元気がないような印象がある」、「中学年でも仲間の名前を呼べない」といったコーチの声に呼応したよきアドバイスでした。そのお話をひとことで表すとするなら、「コミュニケーション力」です。チーム全体ですぐに意思疎通ができるものではなく、まず、4-5人のグループでコミュニケーション力を高めることが大切だそうです。その方法として、ドリルゲームと数多く試合の局面を想定した練習が必要とのことでした。グループ間でポイントや時間で競わせたり、2対1、3対2といった試合で起こりうる局面で生徒達に何をしないといけないかを考えさせること。コーチも今月から「アメーバ経営論」と一年生について考え始めたところでしたので、このお話を拝聴した時は、まさに腑に落ちた瞬間でした。

4枚目のお札とは。もうおわかりですね。その札には「コミュニケーション」と書いてあるはずです。さあ、新しもの好きのコーチは早速、今日から実践です。

まず、練習前に全員を座らせてスクール大会のメンバー発表を行いました。大会には2チームをエントリーしましたので、計4試合あります。1チームはリーグ戦形式で、もう1チームはトーナメント制です。今回は、前にも書いた通り、4つのチーム(6人単位)に分け、それぞれキャプテンを指名し、そのキャプテンを中心にゲームを行うこととします。以下は、時系列の試合出場メンバーです。A・Bチームではなく、キャプテンの名前をチーム名(レーシングチームの名前のようでカッコイイ)としました。そのチームで試合の半分を全力で戦い、その時間に勝てば勝ちです。

①9:00KO. vs大工 チームYou→S1、Y5(C)、T8、A11、K12、K16

②9:10KO.vs大工  チームHaruhito→H13(C)、M19、K20・R21・R27(偶然3太郎)、Masaki、Shousuke

③11:40KO.vs八尾 チームRyu→Y3、K4、S14、R15(C)、T18、J22

④11:10KO.vs八尾 チームYousuke→T2、S6、H7、H9、S10、Y17(C)

⑤14:00KOvs港 チームHaruhito→同上

⑥14:10KO.vs港 チームYou→同上

⑦14:40KO.vs高槻・摂津の勝者 チームYosuke→同上(⑦、⑧は③、④の勝利を前提)

⑧14:50KO.vs高槻・摂津の勝者 チームRyu→同上

今日の練習で生徒には前回同様「三角形」をMan of the Match坊やのイラストを3隅につけた三角形のイラストでイメージして貰いました。先ほど発表したチームの中で3人ひとまとまりの意識を持って試合に臨めるようこれから練習で取り組むことを説明しました。

まずは、ウォーミングアップとして、先ほどの4チームでリレー競争から始めました。

①タックルマシン越えリレー

②スリッパ履き換えリレー(スリッパを脱ぐとき次の生徒の履きやすいように丁寧に揃えていた生徒もいれば、脱ぎ散らかしの生徒もいました。スリッパ走りでK12が器用に芝の上をスケーターの如く走っていたのが印象的でした)

③ボールアップ&アンダー(キャプテンを最後尾にボールを後ろに手渡しするリレー。「上!下!」「右!左!」の声がよく出たチームHaruhitoとチームYouが速くゴールできていました。他のチームは未だコミュニケーション不足のようです。

④△△パスリレー(5人が2つの三角形の角に立ち、決められた順番にボールを回し、速く2周・3周できたチームが勝ち。最初は1個のボール、次に2個で競いました)

⑤扇形パス(キャプテンを扇の要に立たせ、残りの4人とランダムにキャッチボール。ボールは2個ですので、キャプテンが投げ終わったところでキャプテンに放ってあげる気配り力が試されますが、わざとキャプテンを困らせてた生徒もいました。次にキャプテンが代わりの生徒を自分で指名しました)

④ラダー・コーンタッチ・ハイコーンジグザグ走・ミニハードル越え・タックル混合リレー(2つのメニューをこなした後、グランド中央に立てたタックルマシンにタックルし、次の人とバトンタッチ。一年生の練習グランド一杯使って楽しみました。グランドは用具だらけになっていました。コーチはさらに大人の高さの棒も欲しくなってきました)

休憩後、3人一組の動きを意識した練習開始です。

①チームの中の3人でジグザグ走(コーンやら、タックルマシンやらで障害物だらけのグランドをボールを持った生徒を三角形の頂点とし、後の2人が三角形を崩さないようにフォローする練習。横に大きくふられると対応できなかったようです。バリエーションとして、コーチの笛でダウンボール、モール、パスを入れました)

②チーム5人で円になり、ボールを回し、コーチの笛の回数に反応してモール、ラック(モールは笛1回、ラックは笛2回)

③5対5のアタックディフェンス(ブレークダウンを想定した3か所にボールを置いておき、コーチの笛で反応。笛1回は右側、2回は真ん中、3回は左側。アタック側はキャプテンがボールを押さえておき、その後ろに三角形で攻撃の態勢を整え、ディフェンス側はモール(あるいはラック)サイドと相手の陣形に合わせてフラットに立ち、指さし確認を励行。攻撃側のパスアウトでアタックディフェンスを開始。今度の花園のグランドは横が22Mあり広いため広く開いているスペースに展開してみるようアドバイス)

フェーズ(局面)での動きがわかったところで、最後にミニゲームを行いました。チームRyu対チームYousuke、チームYou対チームHaruhitoの2回戦です。それぞれ見ごたえのある攻防戦でした。今度のスクール大会での大活躍が期待されます。指名されたキャプテンも今日早くも闘志をみせてくれましたので、本番が楽しみです。試合の合間にゴールラインの攻防を意識した生タックルの練習を行い、チームへの貢献の中で最も重要なものがタックルであることを再認識して貰いました。

4枚目のお札は皆の中にある。今度の試合で各キャプテンがそのお札を出せるかどうか。コーチたちはじっと見つめていたいと思います。

『三枚のお札』

ある村に、寺があった。そこに、小僧と和尚が住んでいた。ある日、小僧が山へ栗拾いに行きたいと駄々をこねた。和尚は仕方なく3枚の札を出すと、小僧に持たせた。

栗拾いに夢中になっている内に日が暮れる。老婆が現れ小僧を家に泊めてくれた。だが夜にふと目覚めた小僧は、老婆が山姥の本性を現し小僧を食べる用意をするのを目にする。

小僧が「糞がしたい」と言うと、山姥は考え込んで小僧を縄で括って便所へ送った。小僧は1枚目の札を便所の柱に括り、「札さま、何かあったら俺になってけろ」と頼んで窓から逃げた。

山姥が「もういいか」と尋ねると、小僧に化けた札が「もうちっと」と繰り返す。山姥が我慢できず便所をぶち破ると、小僧は跡形もなく消えていて、破れた札があるだけだった。

だまされたと知った山姥は小僧を追いかける。

追い付かれそうになった小僧が「大の川、出ろ」と呪って2枚目の札を投げると、なるほど、大の川が出た。だが、山姥はぐびぐびと飲み干した。

次は「火の海、出ろ」と呪って最後の札を投げると、火の海が出た。しかし山姥は川の水を吐いて吹き消した。

寺に逃げ帰った小僧は和尚に助けを求め、壺に入れてもらった。やがて山姥が寺に入って来た。

「小僧を出せ」

「その前にわしと術比べをしよう。山ほどに大きくなれるか」

「ああ、出来るとも」

「豆になれるか」

「ああ、出来るとも」

豆になった山姥を和尚は餅に挟んで食べてしまった。(了)