彼岸入り前のおそらく今年最後の猛暑の中、二年生23人(うち1名怪我養生中)は暑さに負けず来週の交流戦直前練習を行いました。来週の試合では「ディフェンスでうるさいくらい声を出す」ことを練習前に目標としました。「雄弁は銀なり」という西洋の格言にもある通り、聞く人全てに大きな声で自分達のメッセージを伝えることが今回の最も大切な目標です。聞く人とは、チームメイトだけでなく、相手チームでもあるのです。「声を出すディフェンスはアタックにとって恐怖である」。今頃、石見銀山の近くで同じことを仲間に伝えているであろう我がスクールOGがNZでどっぷり浸かったラグビーカルチャーを二年生にも試合でまねして貰い、恥ずかしがらずに声を出すことの素晴らしさを体感して欲しいものです。蛇足ながら17世紀ごろ、世界に流通する銀の3分の1を日本産が占め、なかでも石見銀山から採掘された銀の量は飛びぬけていたとか。当時西洋では銀が金(沈黙)より価値があったことを考えると、世界遺産に選ばれたことも納得がいきます。
練習の前半は声を出すことをテーマに取組みました。
二組に分かれて10M離れて向き合い、同じ側の2人が同時に大声で色(黄・黒・緑の3色)をコールします。反対側の2人が対面から聞いた色のビブス(10M四方の辺上にランダムに置いてある)を探しタッチして戻り、同じ色の違う場所のビブスにタッチして戻る競争です。最初は小さな声でしたが徐々に大声になってきました。
次に4チームに分かれ、同じ10M四方の正方形内でボールタッチゲーム。ボール3個を5~6人で持ち運んだり味方にパスしたりして相手にタッチするゲームですが、「タッチ」の声がないと無効としました。味方とのコミュニケーション力に期待しましたが、総じて1人で獲物を狙う猟犬的動きでした。
これなら声を出すかとタッチフットに移行。生徒がチーム毎に着ているビブスの数字が奇数の相手にタッチされたらその場で寝てラック形成。偶数にタッチされたら3歩前進後寝てボールをリフト(持ち上げた状態)しサポーターがピックします。二年生に奇数・偶数は無理かと思いましたが、相手が間違えたら強く指摘していましたのでよくわかっていたようです。この練習は抗議の声よりも、タッチに行く際の声、相手対面が余っていること等の指示の声出しができるかを重視しました。コーチに言われなくても大声で的確な指示を出していた生徒も結構いました。これらの練習でよく声が出た生徒をまず選抜しました。
来週の試合エントリーチーム数は3チームですので、各チーム8人の編成としました。各チームが8人の声の力で2試合とも勝利につなげられるか。チーム編成は以下の通り。名付けて「TYN26」、高校ラグビー発祥の地、豊中にあやかって英語略称としました。チームT、チームY、チームN。タックルのT、勇気のY、忍耐のNという意味を持たせ、来週の交流戦に臨んで欲しいと思います。言葉が難しいため、生徒にはタックルのTのみ説明しました。
チームT(vs茨木A、徳島):T2(イメージキャプテン=IC)、K4、Y5、S6(ゲームキャプテン=GC)、H9(チームキャプテン=TC)S10、S14、T18
チームY(vs茨木B、川西):S1、H13、R15、K16(TC)、Y17、J22(GC)、S25(IC)、R27
チームN(vs徳島、川西):Y3(GC)、K8、A11(IC)、K12、K20、R21、M23、R24(TC)
合宿からチームビルディングを開始した二年生には、これから間違いなく出会う変化(強力な競争相手の出現、ラグビー自体へ考え方・捉え方の変化)を脅威ではなくチャンスと捉え、より良い未来を生み出し、最高の成果を上げて欲しいものです。そのためにこれから必要とされるのが、ベロシティ思考かもしれません。ベロシティとは、物理学で言うところの速さと向きとを併せた「速度」の意味ですが、ここでは大きな環境変化に翻弄されながらもチーム二年生の目標達成に向け、スピード(素早く行動に移す)と方向性(自分が向かう方向を見極める)をしっかりと持ち、ゴールを目指すという考え方です。昨年の合宿で気づいたボトルネック(グランドまでの行進の速度を決めているのは、いちばん歩くのが遅い生徒)を単に制約と捉えるのではなく、コ―ラ瓶のくびれたボトルネックが、注ぐ際の流れを制御するためにわざわざ設けられているように、チームのボトルネック(例えば声が出ないなど)を前向きに捉え、チーム全員の力で改善し、最大の成果を引き出そうとする生徒達の意欲に期待したいと思います。
さあ伝統の交流戦。万博の球技場に二年生の声はこだまするでしょうか。