四年生を変える『やりきる技術』
芝のホームグラウンドを持つという30年来の大きな夢が今日実現しました。昨晩の大雨でしっかり水分補給した天然芝に良く似合う青空には、ソフトランディングを数秒後に控えるジェットの機体が幾度も現れ、その大きな機影で瞬間ピッチに暗幕を下ろす航空ショーのおまけ付き。トップリーガーのハイパントなら車輪に届きそうな臨場感です。そんな世界に一つのグラウンドで杮落しの交流戦ができました。30度を超す残暑厳しい中でも四年生31人全員は7試合を最後までやり通し、TRSの新たな歴史の一ページを開いてくれました。残念ながら欠席となった生徒は、富士山登山、野球、レスリング、学校行事の結果はどうだったでしょうか。
記念すべき第一試合(フェイズ・ゼロβvs摂津RS)での初トライは、四年生が目指す倒れない連続攻撃から生まれました。R15→K4→H9と繋ぎ、最後はチームキャプテンY5が育ち盛りの巨体でインゴールにダイブし水しぶきを上げるトライ。トライで本気モードになるや、今度は追いタックルで相手のトライチャンスを封印する守護神ぶりに、R26、R15、K4が波状トライで呼応します。(前半6-0)後半もR15、H9、K4と攻撃の手を緩めず加点し、やはりY5が締めのトライでノーサイド(11-0)。さすがに持っている男は違います。
2試合目は北摂の永遠のライバル箕面Aチーム(vsフェイズ・ゼロα)とのガチンコ勝負。開始1分、マイボールスクラムから出たボールでT18がS6とシザーズ敢行しS6の先制トライ。昨日あたりから二人で打ち合わせていた節があるようなトライから30秒、T18のタックル&オーバーからM19のS1へのパスでトライ。その後も巨漢J22の突進で突き放すかと思いきや、ノッコンを誘い、T18の高速セービングでも叶わない相手カウンターで1点差。前半終了間際には、巨漢から奪い取った相手のトライで同点折り返し。やはり、伝統の一戦と思わせる互角の展開となった後半早々、気を吐いたのは、お父さんの「兄弟みんな絶好調!」宣言があった三兄弟の長男M19。相手エースのトライを阻止するナイスタックルや、右隅に値千金の決勝トライ。T18の中央突破トライ、J22の涙の前半から汚名返上の力強いトライ、そして最後は華麗なステップで3人を抜き去ったS6のトライでノーサイド(6-2)。表題の本で取り上げられている「イラショナル・ビリーフ(非合理的な思い込み)」という心理学用語。たった一度や二度の失敗で暗く落ち込んでいる人は「失敗=敗北者、この世の終わり」などの非合理的な思い込みに支配されることが多いと言われる心理状態だったのかJ22。彼には別れ際、「ミスをするということは、それだけボールのあるところにいるということだから、よい動きをしているわけだよ。あと少しやり方を変えたらきっとうまくいくよ」というアドバイスをしました。同じ思いをハイブリッド・セブンαのチームキャプテンK31が胸の内を吐露してくれました。「キャプテンとしてチームをうまく引っ張れなかった」そうです。「一回キャプテンをやったくらいでそんなことわからないよ。オールブラックスのキャプテンは一番ミスをするらしいよ。それでも仲間がリッチ―・マコウを尊敬するのは、彼が全力でプレーするからだよ」
3試合目は箕面RSさんとの再戦。フェイズ・ゼロγがどこまで食い下がれるかが見所です。序盤からA11がタックルを2本決める活躍で何とか相手の2トライに抑え込む我慢のラグビーの中、ラック連取で掴んだ一瞬の好機をその名の通りK8がトライで1点差として後半へ。後半はY3が3本のタックルで相手をノートライに抑えたものの、追加点を得られないままノーサイド(1-2)。しかし、よく諦めずに頑張りました。
4試合目は紅白戦(ハイブリッドセブンα・β)ながら、白熱した試合となりました。新しく入ったメンバーがほとんどノーミスで今できることを精一杯頑張っていて、よい試合でした。前半は、ハイブリッドセブンβのゲームキャプテンM23の2連続トライで折り返し、後半は、フェイズ・ゼロγでチームキャプテンだったE28が縦突進、モール内で核となる活躍でリーダーシップを見せてくれました。結局、トライを目標にしていた新しい生徒にトライがないまま、K8、H13、R21のトライでβが4-2と勝利しました。R21も強い仲間の中で揉まれ、余裕が生まれたようです。最後に入校したK35もボールを貰い、よく落とさず我慢しました。
5試合目はフェイズ・ゼロαと箕面さんとの再戦。夏合宿のタックル開眼以来、シンデレラボーイとなったS25が鮮やかなノーホイッスルトライ。彼は自陣から鋭角に切り込んで向かってくるタックラーにはスピンを効かせノリノリのプレーを披露(オフロードで繋ぐことをやっているので、スピンは相手陣の勝負所でやって欲しいと最後伝えましたが、が、彼なりに工夫をしているところが素晴らしい)。S6、S1、J22の連続トライで折り返し(4-0)。後半もT18が相手にタックルをさせながらオフロードでS25に柔らかいパスを通し、S6のトライに繋げたシーンに続いて、J22から受け取ったボールを瞬時の判断で一人余ったS6に余裕のパスでトライ。M19の鼻血応急処置の間、H7が助っ人に入りハーフ役を立派に務めました。最後は2本のナイスタックルで元気を取り戻したJ22がトライしノーサイド(7-0)。
6・7試合目は、二つのコートで同時進行。フェイズ・ゼロβは箕面Aと、一方、フェイズ・ゼロγは摂津さんとの最終決戦。箕面戦では先制を許す苦しい展開の中、S10が何とか同点トライで後半、R26がナイスタックルと2本の独走トライ、R15のフェイントパス(だったとか、決定的瞬間をエアバスに見とれてしまい、、、)で突き放したものの、最後、相手なでしこに3人タックルを外されてのトライ献上で4-3。時間に救われる薄氷の勝利でした。隣コートに目を転じると、A11の2連続トライで折り返し、H13、M23の連続トライで加点し、危なげなく5-1の勝利。Y5のトライで始まった歴史がM23のトライでその1ページ目を閉じました。
試合前に生徒たちに伝えたのは、大事なのは勝ち負けじゃなく、自分たちのホームに参加いただくチームを迎え、全力を出し切り、気持ちよくお帰りいただくこと。あとは、夏合宿以来テーマとしてきた「倒れないラグビー」をやりきること。それだけをやって欲しかったのですが、最初のおもてなしが満足にできなかったことに、コーチはがっかりのあまり、大人げなくも初めて雷を落としてしまいました。
表題の本は、作者の小倉広氏が第一章から自身の苦い過去から導き出した教訓で始まります。
「決めたことを守らない」チームは腐っていく。約束事を守らないことが「当たり前」になってしまうのだ。そんなチームが勝てるはずがない。このチーム。大変皮肉ではあるが、「勝利」のために約束をつくったはずなのだが、その約束がチームを勝利から余計に遠ざける結果となってしまった。チームを強くするつもりのはずが、以前よりもチームを弱体化させてしまったのだ。
記念すべき今日の日に他のチームが全試合終了後、走って挨拶に来られたことに対し、わが四年生はもたもたと集まり、心から感謝の気持ちを伝えようとしない。アフターマッチファンクションで両チームの健闘を讃えあう習慣があるラグビーではありえない態度でした。コーチの指導が足りなかったと猛省しています。
何が原因なのか考えてみると、スター・ウォーズでルーク・スカイウォーカーにヨーダがきつく叱りつける言葉がその核心をついているのではないかと、思い当たりました。
ルーク:「わかったよ。やってみるよ」
ヨーダ:「やってみる、ではない。やるのだ。試しなどいらん(No! Try not. Do Or Do not. There is no try」
ラグビーに「トライ」などいらんと言われると、サッカーになってしまいます(ラグビーのトライはそもそも得点がなく、ゴールの権利が与えられただけ)が、ヨーダは、ラグビーのことではなくて、トライ(試す)という言葉には、ちょっとした言い訳が潜んでいることを見抜いていたわけです。ルークが「今日は試すだけ。本格的に行動するのはまた今度」と言っていることを叱ったわけです。大きな目標を達成するには、今すぐ全力でやらなくてはならない。どうも、コーチを含め四年生には「また今度」やればいいという気持ちが巣食っていたようです。いま「やりきる」ことができないと、人生の負け癖がつく。「やりきる」ことができるようになると、自信がつき、人から信頼される人間になる、とは、この本の小倉氏もおっしゃっています。
ではなかなかできない「やりきる」ための最も大切な真理は何か。小倉氏は、「やり直す」ことだと自らの経験で断言されています。
今日、何十機も上空を通過し飛行機は目的地の伊丹空港に向かって一直線に進むわけではなく、風の影響や計測器の狂いなどから間違った方向へ進みながら、その都度細かく軌道修正していくそうです。
ジグザグでいい。一時休憩があってもいい。いったんあきらめてもいい。それでもやり直すのだ。それが「やりきる」ことへの唯一の道ではないかと僕は思う。目的に向かって一直線に進む必要なんてないのだから。(小倉広氏『やりきる技術』)
次は、茨木RSさんとの交流戦です。一歩、一歩、可能性満載の生徒たちと一緒に前進したいと思います。

