カテゴリー: '16-6年生チーム

二年生の成長過程で身に付けたい『「抜く」技術』

昨日降り続いた雨に加えて水はけの悪いグランドながら、練習には問題のない適度な状態でした。一時間以上前から保護者と生徒に水抜きをしていただいたおかげで、出席した生徒全員(23人、1人怪我のため見学)でたっぷりタッチフットでウォーミングアップできました。タッチフットは途中からコーチを抜いて数人の生徒に順番にレフリーを任せてみました。ポジショニングはほとんど動かず、遠くからタッチの回数を数えるだけでしたが、二年生にしてはよく頑張っていました。今後、生徒にレフリーも任せ、自主的に練習できるようなシステムを作ろうと思います。

あと5日と迫った花園第2グランドでのスクール大会、そして翌々日の高槻市ラグビーカーニバルに向け、直前練習をいつもより緊張感を持って行いました。コーチの指導もいつものほのぼのモードから一転、厳しいものに変わって、生徒も戸惑ったことでしょう。まず、改めてメンバー4チームを発表し、チームピーチが黒、レッドが黄、グリーンが緑、ブルーが青のビブスをそれぞれ身に纏いました。選ばれた12人のキャプテンに惜しみない拍手が送られました。

メンバー発表後、花園・高槻両大会の作戦を細かいことは抜きにしてアタック、ディフェンス各1つだけ伝授しました。極めてシンプルな攻撃パターンはこれまでの早朝タッチラグビーで身に付いたことを実際のタックルありの試合で行うというものです。昨日世界ランキングでほぼ互角のグルジアとの接戦で劇的な勝利を収めたジャパンの「アタックシェイプ」に近いのかも知れません。まずは、生徒全員の前で紙を見せて手拍子で息を合わせました。25個の●と○をある一定のパターンで縦に並べ、それを見ながら全員で手拍子しました。夏の練習時にもやったことのある練習だったのか、全員よく息を合わせていました。

●の箇所は手拍子を行い、途中に3箇所○○印をつけた箇所は手を叩きません。5日後の試合に向けた作戦をこの手拍子で感じて貰いたいがために、途中、手拍子をしない「間」を置きました。早くから水抜きを行った生徒に今日気づいて欲しかったのは、「抜く」ことの効用です。ラグビーは相手とのコンタクトなしには試合にならないため、えてして強引なまで力を出し切ることがもっとも効果的と考えがちです。じつは力を最大に得るためには、そこに力を抜くという逆の要素を活用することが必要と唱える学者がいます。コーチもその考え方に賛成で、力を抜く仕組みがないものは実は脆い。生徒が皆続けられるものとして答えてくれた呼吸も同じこと、常に力んで酸素を吸い込むだけで息を吐くことがなければ死んでしまいます。血液も同様です。熱力学では、「熱から有効な仕事を取り出すためには、ムダがなくてはならない」という大原則があるそうで、やけどしそうな熱源の二年生にもムダあるいは「あそび」といった「抜く」技術が必要なようです。

人間は放っておくとひとりで頑張り、やりすぎてしまいます。ラグビーという大人数でプレーするスポーツでは、ワンマンプレーが致命傷となるケースが多々あります。一見、最大の力を発揮するプレーヤーに任せておけば勝てると思ってしまいがちですが、二人がかりでマークされたり、怪我で退場したときに弱さが露呈するものです。押しの強い選手と引きの強い選手といった相反する二つの要素を活用することは、ムダが多いようで実は強いチームに欠かせない考え方かもしれません。

かといって引く力だけの生徒に引き技だけを教え込むというのも問題です。引き技は押す力が最大になって初めて活かされるものです。全力を出し切って初めて相手は全力で反発してくるから引き技が効果を発揮するのであって、最初から腰が引けていては勝負の土俵にも立てません。今日の練習で、栄えある花園でのイメージキャプテンに指名したS25のプレーが全力を出し切っていない様子に、彼に向かって大声で「やり直し!」と呼び戻しました。初めてコーチに怒鳴られてバツの悪い思いをしたと思います。合宿での体力測定三冠王の彼なら花園を縦横無尽に駆け抜けてくれる力を持っているが故の熱い指導と思って、どこで力を出し切って、どこで抜くのかがわかる選手になって欲しいと思います。

もう一つ、「記憶を抜く」という生産的な手抜きの効用も二年生には知って欲しい技術です。人間には覚えていられる容量に限りがあります。そこで忘れないようにメモに残します。それによって安心して忘れることができ、記録が記憶の手抜きを可能にしてくれます。今日、S6が見せてくれたラグビーノートも、わざわざ書いておかなくてもその時は覚えていられるものばかりです。けれど、これから覚えないといけない情報が増えてくる二年生には、いつか忘れ去られる日が来ます。そうならないように、たまにノートを読み返すことは忘れやすい生徒にとってとても大切な習慣となるでしょう。怪我でも見学に来て練習内容をノートにイラスト付きで描いていたA11のノートを借りて今開いています。「ボールははしりこんでからもらう」「あいてにぶつからないでなかまにパス!」とか子供ながら気づきを言葉にしていて、高い理解力に驚かされました。12月の完治が楽しみです。

アタックでの作戦遂行、ディフェンスでの決まりごとを再確認して、ピンボール(ダウンボール→ヒット→ピックの繰り返しでゲーム)を行った後、ピーチ対レッド、グリーン対ブルーのミニゲームを行いました。ピーチは2連続先制トライでレッドを手こずらせる緩急のある良い動きでしたが、5-4でレッドがかろうじての勝利。グリーン対ブルー対決では、K8が追いタックルでトライを阻止したプレーが印象的でした。身を挺したタックルはまさに「私を抜く」ことによって仲間から信頼を得る人間関係を構築する技術だと気づかせてくれるビッグプレーでした。本人はケロッとしていたところが、彼らしく微笑ましい光景でした。

花園では、4チームが5~6試合を行います。各試合を前半・後半に分けて、ブルー・グリーンが寝屋川、枚方と、ピーチ・レッドが高槻、阿倍野と戦います。これらの勝敗で試合が組まれており、その数試合はコーチ選抜チームをその日、肩の力が抜けている選手中心に組成したいと思います。全てはその翌々日のために。

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4 thoughts on “二年生の成長過程で身に付けたい『「抜く」技術』

  1. いつもご指導ありがとうございます。日曜の夜、仕事からの帰宅途中に福島コーチのblogを読み、今回の話を知りました。
    翌月曜の朝、昨日の練習での「やり直し」の意味は分かった?とS25に声をかけ、福島コーチのblogの受け売りですが、父親として補足の説明をしました。
    その後、ラグビーノートに(パスをすることだけではなく)「ボールを持って走る!」と具体的に書き込んでいましたので、少しは理解できていると思います。
    実は本人、11月に入って朝のランニングを始めたりするなど、少しずつではありますが、自分なりに考えて行動し始めています。
    今週末の試合では、チームピーチのイメージキャプテンの名に恥じぬよう、頭も体もエンジン全開でプレーすることを期待したいと思います。

  2. S25父さん、
    ご家庭でフォローアップいただきありがとうございます。
    ラグビーノートに書いた通りですね。まずボールあるいはトイメンに全力で向かってみる。合宿後、早出をして皆と練習頑張ってきました。さらに自主練も始めれば鬼に金棒。週末たっぷり試合をして経験値を積み上げて欲しいものです。

  3. 福島コーチ始め、コーチの皆様にはご指導頂きありがとうございます。
    いよいよスクール大会ですね。みんな日頃の成果がひとつでも試合で出れば、それが次へのステップにつながると思います。みんながんばろう。
     雨が降らないときは、畑作業をしてから12時には着くよう見に行きます。

    • K12父さん、
      雨は現象であって原因ではないということがわかっただけでも意味ある一日でした。K12は久しぶりのゲームで緊張したのか、ウォーミングアップからボールが手についていない様子でした。明後日の不参加は残念です。兄姉に稽古をつけてもらって家庭内「強育」をお願いします。6年生のスクール大会最終戦ではお姉ちゃんの出番が少なくて残念でした。