カテゴリー: '16-6年生チーム, 未分類

二年生が過ごした『Less is More』の夏休み

長かった夏休みも今日が最終日。思い出を沢山つくった生徒24人(1人骨折ながら参加)が集りました。練習前に皆に聞いたところ、合宿以外に沖縄、石川、福井、和歌山など旅行が楽しかったという生徒が沢山いました。コーチも長い夏休み期間に、合宿、ジョギング、山登り、水泳、読書といったシンプルライフにどっぷり身を置いてみました。そんな非日常的な生活で気づいたことは、見た目は質素だけれども、中身は豊かであること。逆に日常の生活は、家やモノ、場所、仕事など様々な制約に縛られてほんとうに豊かなのだろうかと考えさせられました。戦後の日本人は、右肩上がりの経済成長に合わせて消費の質を向上させるという古い価値観でライフスタイルを作ってきたと言っても過言ではないでしょう。しかし、人口ボーナス(全人口のなかで労働人口の比率の高い期間、経済は急速に成長するという学説)の考え方からすると、1人の働き手が1人の子供あるいは老人を支える時代を既に迎えた日本では、あふれるモノに振り回されない新たな価値観が必要なのかもしれません。

ラグビーも日本にいながら様々な情報をネットなどで気軽に早く集めることができるようになりました。しかし、あふれる情報に振り回され進むべき方向性を見失いそうになります。そんな中で、これから求められる日本のラグビープレーヤー像は、数多くの情報の中から常に自らの選択で行動できる、自分でコントロールできる人材であり、自由度が高まる一方で、無のものから価値を生み出す能力が求められると思います。More is Better(高度経済成長期、映画解説者小森のおばちゃまの名せりふ「モアベターよ」が流行った理由がこの思想)からLess is Moreのラグビースタイルへ。「(人数が)多いことは良いことだ」と言える大所帯二年生チームが「より少ないことが良いことだ」とはアンチテーゼ的なテーマですが、人数のことではなく、生徒一人一人がどれだけ選択肢を絞り込み、新しいラグビーを創造できるかを六年生までの遠大なテーマと考えています。

Less is Moreのライフスタイルで思い浮かぶ国はニュージーランド。今日はNZ留学から戻ったばかりのスクールOGの監修でNZ式練習の開始です。ラグビー日記に百以上ものトレーニングメニューを書いてくれたので、9月以降存分に活用させて貰います。

まずはウォーミングアップから。

①5人一組で縦に2M間隔で横向きに並び、パスのリレー競争:ポイントは、受け取る人がハンズアップし「右」「左」の声を出すことと、パスする人がフォロースルー(パスした相手に両手を向ける)で正確に投げること。ハンズアップというとバレーボールのトスのように指を上に向けるポーズをとりますが、NZ式は指先が手のひらよりも低くなるように手首を曲げるそうです。全く逆ですが、ノッコンがほとんどなくなるだけでなく、ボールを持ちかえる必要がなくクイックパスができました。

②15M3人リレー:3人でABCと走る順番を決めておき、A→AB(ここから手を繋ぐ)→ABC→BC→C1の順にそれぞれ一往復で時間を競う。これにはお父さん達にも参加いただきました。1人が3連続往復なので見た目より結構きつかったようです。NZ人は、しんどい練習をいかに楽しくやるかと考えるそうです。

次に判断力(Decision Making)のトレーニング。

③2vs1:24人が5M四方の四隅に均等に分かれ、両辺が向き合ってパスやパスダミーで5M前進します。これに対角線の交点上にディフェンスが1人立ち、前進を阻止できれば交替します。アタック側がディフェンス関係なしで前進すればよく、ディフェンスの動きが遅いといじめのようになってしまいます。二年生ながら、パスのタイミングもよく、パスせず前のスペースに走る判断力もついています。これなら次の練習も可能。

④3vs2:同じ四角形の向き合った両辺にそれぞれ3人が立った状態で3vs2。攻撃側の真ん中からスタートし、両隅に立ったディフェンスの出方によって左右どちらにパスすべきかを一瞬で判断します。この練習はアタック練習と思われがちですが、ディフェンスの声を出す練習としても効果的でした。NZでは、味方同士のコミュニケーションを大変重視しており、特にディフェンスでは会話しまくる。反対にアタックはパスを受けるためのdeep、flat、short、wide、miss me outの指示以外は一切会話をしないそうです。二年生もディフェンスが「俺が(ボールを持っている相手に)行く!」と大きな声が出るようになり、声だけでアタックのミスを誘っていました。「声を出すディフェンスはアタックにとって恐怖である」

ヘッドキャップ、ジャージービブスを装着してブレイクダウン練習。

⑤ラックのオーバー:四角形のコーナー3か所に黒・緑・黄色チームがそれぞれラック状態を作り、青色チーム一人づつラックの周りを回り、笛と1~3の番号(ラックにつけた番号)のコールで呼ばれた番号のラックへオーバーで挑みます。寝てダウンボールしている生徒の向きが縦長や横長となっており、オフザゲートの反則に気をつけながら5人で待ちかまえる相手にオーバーしようとしましたが、どれも押し返されました。昨日多くの生徒が観戦したトップリーグ開幕戦で印象深かったプレーがオーバーだったそうです(神鋼のノッコンが多かったのも印象的だったようです)が、そう簡単ではないことがわかったようです。

⑥1vs1で相手にボールごと捕まった場合の対応:この練習が体得できるようになれば、ブレイクダウンを有利に展開できます。ここはブラックボックスにしておきます。

カラービブス対抗ミニゲーム:楽しいNZ式ラグビーレッスンで熱中症もなく2時間があっという間に過ぎ、残りの30分、たっぷり実戦で今日の練習をおさらいしました。ランダムに組成したチームですが、どのチームも実力が拮抗しており、ワンサイドゲームがありません。S1の倉庫激突トライ(コンタクトバッグで壁をカバーしていましたが、大丈夫だったでしょうか)、S6のチェンジオブペース、H9の路地裏うなぎステップ、S10の数人引きずってのトライ、今日は絶好調男H13のしつこい追いタックル、S14のディフェンスでの大きな指示の声、R15の低く入れるようになってきたタックル 、なでしこK16の素早いアップディフェンス、K20のタックルダミーで先ほど出来たとおりの地を這うタックル成功!、R21も持ち前のスピードで相手によく追いついた、J22はインゴールノッコンは相変わらずだけどチームの核弾頭的存在になってきた、M23はもっと練習に来たらもっとうまくなれる、S25は周りがよく見えて来た、R27はボールを拾ってからの初速がチーム随一、と書ききれないくらい今夏の成長が手に取るようにわかる二年生。

ラグビーの楽しみ面白みを得るために敢えてポジティブな選択をし、自分自身のやるべきことを減らしてシンプルに生きる。それが二年生の幸せに繋がってくれれば言うことはありません。

来週も都合でお休みします。再来週はいよいよ開幕戦メンバー・キャプテン発表です。来週の参加が重要となります。見られませんが、元気に走り回っている姿が今から思い浮かびます。

LINEで送る

4 thoughts on “二年生が過ごした『Less is More』の夏休み

  1. いつもありがとうございます。
    偉大なOGの登場、さらに「練習楽しい?」と声かけて頂いたようで、K16は家でそのことを話していました。
    まずは交流戦で、合宿で学んだことや得たことを出し切って、「楽しかった」と思える試合をして欲しいと願っています!

    • K16父さん、
      OGはK16にとても会いたがっていました。完全にNZやオールブラックスにかぶれてしまってますが、K16もラグビーのことをもっともっと好きになってOGと同じピッチに立って欲しいですね。
      まずは茨木交流戦での活躍を楽しみにしています。

  2. NZ情報ありがとうございます。
    なんとNZではハンズアップというと、手のひらを上へ向けるのですね。
    確かに上から下へキャッチするよりも、下から上へキャッチするほうがノッコンも減るかもしれませんね。
    幼稚園児を相手にボールを投げると、たいていは腕をだらんと下げたまま待ちますので、顔の辺に来たときは手が間に合わず、顔で受けてしまいます。そこで、手のひらが前で、指先が上という日本式のハンズアップを教えるのですが、たいていは一回だけやって、次からはまた腕が下がってしまいます。なぜやらない、あるいはできないのだろうと思っていたのですが、日本式では手首の外側の筋肉を使いますから、幼年さんにはやりにくいのかもしれません。ハンズアップの形をしっかり決めるのではなくて、自然な形でもう少し腕を上げさせるだけでいいのかもしれませんね。

  3. 幼年指導員YHさん
    コメントをいただきありがとうございます。
    おっしゃるように「自然な形」がいちばんですね。身体に負担の少ない理にかなっている所作とも言えるかもしれません。ハンズアップの他に、YHさんの息子さんが今磨きをかけているキックも、NZ式は従来の日本式と大きく異なります。
    NZではキックは蹴りたい方向に真直ぐ向いて蹴ります。日本では空手の回し蹴りのようなインサイドキックがラグビーだけでなくサッカーも当然のように行われてきました。トップリーグでペナルティ地点からタッチを狙うキックやスタンドオフがウイングへキックパスをするシーンを見ると、狙いに真直ぐ向いた状態から膝を真直ぐ前方につきだして膝の振りだけで蹴っている光景がよくあります。腰を捻って蹴るインサイドキックをしている選手は少なくなりました。真直ぐ向けばキックの方向性、距離の正確性が増すばかりか、体幹の強い力がボールにダイレクトに伝わりロングキックも可能になりそうです。30年以上前のプレースキックは今見ると違和感がありますが、当時のトーキックは理にかなっていたわけですね。但し、蹴った後どうしても結果を気にしてヘッドアップし体重を後ろに持って行っては意味がありません。蹴った後も前傾姿勢を保ち(あごを引いて足先を見て)歩くイメージが大事ですね。
    このようにおそらく全ての基本動作に日本と世界では大なり小なり違いがありそうです。これからも一つ一つ自然な形を追求して、生徒の不自然な動きから生じる怪我を未然に防ぎたいと思います。既にお読みと思いますが、初動負荷理論で有名な小山裕史氏の『奇跡のトレーニング』(講談社)も非常に参考になります。