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四年生にとっての『ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか』

先週、先の台風影響で中止になったように今週も練習中止が危ぶまれましたが、今日は少し肌寒い風がアジリティ・ポールを何本か倒す程度の晴れとなり、天然芝のグラウンドで練習ができました。参加者28人、うち1人怪我で見学、その見学者に付き添っていた生徒1人(不思議くん)、あるコーチに外で見ているように言われ、結局帰ってしまった「国の無い男」1名(ラグビーノートはコーチが預かっています)。35人も生徒がいると個性のぶつかり合いが見えないところであるようで、なかなか一つのチームとして纏まりません。昨日、四年生コーチ陣7名が集まって今後の運営について熱く討議しましたが、生徒たちをチーミングするうえでちょうど過渡期(あるいは転換期)にさしかかっているという共通認識がありました。

そんな生徒たちに練習開始前のミーティングで、画用紙に描いた図を見て貰いました。その画用紙には横にX軸、縦にY軸を描いておき、タイトルは「進歩の未来」と記入しました。ここで生徒に問題を投げかけます。「君たちはどっちの軸の方向を目指すべきか?」ポカーンとしていながらも何かを考えている様子で、次のページ。

さっきもコーチに「集合!」と言われてゆっくりと集まってきた多くの生徒に、「一年生からずっとやっていることを四年生でもコーチに言われるの待って行動するのは、コピーと一緒や。コンビニとかでコピーしたことあるか?昔、コピー機が出たころ顔面をコピーした人もいたぞ。(少しくすくす笑い、やった!)」「あたりまえのことは人に言われなくてもさっと動く。言われてばかりの人生は、過去の成功例をそのままコピーしているだけ。この図の真横に地べたを這っている線(X軸)と同じや」

「言われなくても行動できる人間にまずなって欲しい。そして、新しい何かを行なう、例えば青色LED発明でノーベル賞を受賞した日本人がまさにそう」。転換期にある生徒には、1からn(整数)へ拡大していく人生ではなく、0(ゼロ)から1を生み出す生き方を目指して欲しいと、図にそんな言葉を書き加えて少し難しい話をしました。

「今はわからないかもしれないけど、中学、高校、大学と進んでいくと色々なコーチに教わると思う。その時に今まで習ったことと違うと感じながら、ただコピーするのではなく、今日のことを思い出して、自分はこう考えるというものを持ってほしい」

今日の練習後、帰宅して読んだ本『「筋肉」よりも「骨」を使え!』(甲野善紀、松村卓共著)に同じ思いの一節が目に留まりました。

「いまの若い人を見ていると、教わったことを覚えてやろうとばかりする人が少なくありませんが、それだけじゃダメなんです。教わったことをきっかけにして、独自に展開して、自分の中で新しいやり方を見つけていく。そうでないと、本当に役に立つ動きができません。それができる人には、今度は私のほうが教えてもらって、ああ、こういうことがあるのかって変化していける。」(武術研究者甲野善紀氏)

この本、私の好きな甲野氏と元陸上100メートルのスプリンターとして自己最高10.2秒の記録を残したスポーツトレーナー松村卓氏(「骨ストレッチ」で有名)の対談集ですが、筋トレもストレッチもやってはいけないとまで言い切る過激な本ではありますが、ゼロから1を生み出そうとしているスポーツ界の異端者のお二人だけあって、目から鱗がボロボロ取れる感じです。

先ほどのX軸Y軸の話。これもコーチお得意の受け売りなわけで、この簡単な図式で今の時代を看破した同世代の人物が最近日米同時に上梓した表題の本から、コーチが自分なりに考えた話です。この人物、フェイスブックの最初の外部投資家というのが日本人にはピンと来るピーター・ティールというエンゼル投資家。コーチが実際に現地で体験したタイバーツの暴落から端を発したアジア通貨危機から今までの時代を、このX軸とY軸で説明する優れた洞察力に度肝を抜かれました。

彼の言うX軸はグローバリゼーション(ある地域で成功したことを他の地域に拡げること。中国は国家ぐるみで行い、20年計画で今の米国を目指しているという)、Y軸はテクノロジー(タイプライターからワープロを作るような進歩。つまりゼロから1を生み出すことだという)。この数十年グローバリゼーションは進んだが、テクノロジーはほぼIT分野に限られているというのがティールの見立てです。

新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、つまりスタートアップだ。(中略)スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人たちの集まりだ。いちばんの強みは新しい考え方で、少人数なら敏捷に働けることはもちろん、考えるスペースが与えられることが大きな利点になる。従来の考え方を疑い、ビジネスをゼロから考え直そう。(ピーター・ティール)

今日の練習中、コーチの指示した方法をやらずに「違うことをやっているぞ!」と言われ「わかってるって!!」と言い返したR15。彼の心から出たであろうこの気持ちを大事にしたいなと思いました。彼はその後、イラッとしていましたが。

今日から練習方法を変えました。最初の30分間は兎に角、毎週同じ個人スキル練習をやって、一週間経ってすっかり忘れてしまいましたということのないようにする。「昨日の昼何を食べたか覚えている人が少ないように、人はルーティーンなことはすぐ忘れる」と言うなり、ハイ、ハイとたくさんの手が挙がりました。そうか、昨日は運動会だったから、おいしいお弁当だったか。抜かってた。

パスはポップからロング(目標は左右とも10メートル)までできるようにする、キックは正面を向いて膝の振りだけで左右正確に10メートル先の標的に届くようにする、2on1、2on2の局面でパスのタイミング、相手へまっすぐ向き合う姿勢、パスを貰いに行く方向を身体で覚える、ブレイクダウンで素早く低く相手を押し込むことができる、動いている相手を左右の肩でタックルできるように、同じメニュー(若干飽きの来ないようアレンジします)を繰り返し練習します。今日は、各5メートル、7メートル、10メートル四方のグリッドで経験の浅い、あるいは自信のない生徒は5メートルで、自信のある生徒は7メートルグリッドで練習を開始しました。最後は、E28やD34が他のコーチのお墨付きを貰い10メートルグリッドに二階級特進したのには驚きました。自主練でパスに磨きがかかっていました。上手な生徒もうかうかとしていられない良い流動性が起きつつあるようです。

今日は90分もかかって全部できませんでしたが、徐々に上げて行って、30分経ったらみんな息が上がっているという練習にしたいと考えています。もちろん生徒の自発的な行動がなければとてもできません。気持ちを高める時と、抜く時のメリハリのあるチームになって欲しいものです。最後にH32が寄って来て、「タックルされたときパンツがずれて、ハンケツになって、K16に見られちゃった」となかば嬉しそうに語って帰って行った生徒の言葉に暖かいものを感じてグラウンドを後にしました。明日の練習は台風を考慮し中止です。さあ、来週はいよいよメンバー発表です。この一週間で生徒にどんな成長が見られるでしょうか。

 

 

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3 thoughts on “四年生にとっての『ZERO to ONE 君はゼロから何を生み出せるか』

  1. Fukushimaさん始めコーチの皆さん、いつもご指導ありがとうございます。

    13日の練習は早々と中止が決定し、その日は2週間ぶりの練習で気持ちが高ぶっていたせいか、12日の夜にS25とロードワークに出かけました。

    寝る前にFukushimaさんのblogを拝見し、これもゼロから何かを生み出すきっかけの一つになればと思っております。

    少なくともS25は、走り始める前は「昨日のサッカーの試合に続き、今日はラグビーの練習で体がしんどいのに、さらに台風も近づいてるのに、お父さんは何を言い出しすんやろう」と、口には出さないものの思っていたはずです。

    ただ走り終わってからは、母親や妹に内緒でソフトクリームを食べて、ニコニコしていましたから、そんなこともすっかり忘れていたでしょうが…。

    こんなことの繰り返しが、きっと息子を後押しするはず!?
    と、自分に言い聞かせるように、筋肉痛の足をいたわる父です。

    「継続は力なり」ですよね、fujiiコーチ!

    • S25父さん、
      日曜日の練習中、「パスは片手でもいいですか?」と聞いてきたS25。利き腕でない側から10メートルの両手パスは難しいと分かって、諦めるのでなく(他の届かなかった生徒は「右側から投げていい?」と許しを乞うていました)、何か届かせる方法がないか考えたことを評価し、「もちろん!ラグビーにパスは両手で投げるというルールはないよ」と左手での片手投げを認めました。そうやって難局を切り抜けたS25。これこそが0を1に変える発想だと嬉しくなりました。
      そもそも利き腕、利き脚なんていう言葉は、自分が楽にしていられるコンフォート・ゾーンだと思っています。そのため、コンフォート・ゾーンから外れる努力(左投げ)に対して脳は無意識的に強く抵抗します。ダイエットも語学習得でも挫折しがちになるのはこのためと言われています。この楽な状態を変えようとするには、あらかじめコンフォート・ゾーンをズラしてやればいいと言われています。両方の手や足で自在にパスやキックができる自分にリアリティを感じれるようにすれば、パス(キック)が左右自在にできる自分に近づくように脳が勝手に働いてくれることになります。S25父さんは、コンフォート・ゾーンをうまくズラして、短期間にダイエットに成功したお手本ですね。星一徹は右利きの飛雄馬を幼少時、左利きに矯正したというどんでん返しのストーリーで我々子供の夢を見事に壊してくれましたが、S25にはそういう矯正ではなく、ただ「左右自在にパスやキックができる自分」が本来の自分なのだと思うようにうまくリードしてあげてください。それができるのは成功者のお父さんしかいません。

  2. S25のお父様
    確かに、継続する事により、練習前15分レクチャーも参加者が、増えてまいりました。
    特に、タックルは生徒の関心も高く、マスターしたいスキルなので、参加者が多かったと思います。今週はタックル最終回、来週の試合で1回でもナイスタックルが決まれば全員卒業です。今後もテーマを考え実施参りますので、興味のあるテーマの時は是非参加して頂きたいと思っております。
    何かを成し遂げようとするとき、1番確実な方法は、諦めないで出来るまでやり続ける事かもしれません。「継続は成功なり」