カテゴリー: '16-6年生チーム

四年生が『「わかる」とはどういうことか』

今日は降雨で中止にしたら晴れて、中止解除したら雨が降り出し、なんとも天邪鬼な天気に翻弄されました。生徒の健康上、中止と英断された学年もありましたが、類人猿4タイプに分類される四年生は対照的に、本能をむき出しにして天然芝の上を走り回っていました。

久しぶりに芝全面を使って、もうええわと音を上げるまでタッチラグビーをやってもらいました。ところが1時間近く延々と続けても音をあげるどころか、ゾーンに入っていくではないですか。「疲れを知らない子どものよう」そのままに背番号奇数組VS偶数組の対決(10点デュース制)が偶数組9-奇数組5の大差からもつれにもつれ、奇数組怒涛の逆転劇でノーサイド。大差がついた局面では仲間の雨中の仕方ないミスに「チェッ!」と舌打ちしたり、相手の方が強いからメンバーチェンジしてくれとアピールする生徒もいましたが、背水の陣となったところでチームの「空気」が変わったと感じました。

新しく入った生徒は初めてのタッチラグビーに何をどうしたらいいのかわからないまま、棒立ち状態でしたが、先達の高速プレーに目が慣れてきたのか、ボールに絡むようになりました。K35が受けたボールを順目にパスしたり、K33がラックのオーバーに入ったりと見様見真似でちゃんと様になっていたのには驚きました。この二人、ラグビーノートにもチームのためにミスをなくす、パスを通すといったことを書いており、自分のことだけに注意が向きがちなスターターとは思えない成長ぶりに感心しました。K33は先週三年生相手のゲームで初トライできたこともノートに書いていました。コーチはうっかり見落としていて一週間遅れの祝福となりました。ごめんなさい。

人間が日々の生活の中で未知のことに出会い、それが何であるかを「わかる」とはどういうことかについて表題の本では著者(山鳥重神戸大学医学部名誉教授)の専門分野(神経内科学)の見地から平易にまとめています。最近、漏れてはいけない情報が漏れていたことが「わかって」しまった某通信教育関連出版社ですが、この出版社と山鳥教授の対談の中で、「わかる」には、「重ね合わせ的理解」と「発見的理解」があると教授はおっしゃっています。

「重ね合わせ的理解」とは、頭の中にモデルがあって、そのモデルに照らし合わせて答えを導こうとするやり方。一方、「発見的理解」とは、答えが自分の外にしか存在しない場合のわかり方だと言います。自分で自分なりの答えをつくり出し(仮説)、その仮説でうまくいくかどうかを観察してみるというふうに心を働かせながら、自ら答えを発見していくものだそうです。

教授はこれからの時代により重要になってくるのは、これら二つの理解のうち、発見的理解だと断言します。人類はそうやって生き残ってきたし、複雑で不透明な今の時代に必要なものはそうした力だと。同質社会の日本では子どもたちでさえ「こんなことを言ったら、みんなから笑われてしまうかな?」という気持ちが先に立ってなかなか発言できないのですが、教師やコーチは、怒ったり笑ったりせず、子どもの頭の中にある考えをきちんと引き出して受け止める雰囲気を教室の中につくっておくことが大切だとおっしゃいます。

ラグビーノートには、練習での様々な「発見」がたくさん書いてあります。E28は、「次のプレーを考えて」行動するというようなことが書いてあり、ラグビーで重要な「予測」の概念に通じる門を叩いた音がノートから聞こえました。

ノックオンで「アゲイン(やり直し)」ありの古典的ランパスを5往復できた(予想以上にミス少なく短時間でやってのけたのには感服しました)後、生徒を集め、画用紙に描いたある「図」をじっと観察してもらい、動き出したら帰ってよいことにしました。なんとY5が真っ先に「動いた!」と声を上げたことにコーチが驚きました。人にはどんな才能が隠されているかわかりません。この図も山鳥教授の本からの引用ですが、「ネッカーの立方体」という図です。何の変哲もない透明な立方体なのですが、しばらく凝視すると奥行きが交互に変わることをK5が見つけ、数秒後には多くの生徒も「動いとる!」と「わかった」ことに喜びを見出していてコーチも嬉しくなりました。

ラグビーでは「ボールは絶えず動いています。ボールから離れている人も絶えず動いています。そのボールの動き、人の動きから、次はこのあたりにスペースが出来るはずだ、という予想を立ててそこへボールを蹴る、あるいはそのボールを蹴る人のイメージに合わせてボールがそのスペースへ飛ぶことを予期して走り込む、などという複雑な動きができるのは視空間能力のおかげです」と教授はスポーツの喩えで、これから四年生に必要となってくる空間関係が「わかる」ことを説明しています。

「わかる」段階に差がある35人が同じ釜の飯を喰う貴重な経験を通じて、お互いを理解し合い、一つの試合イメージを掴んで勝利に繋げていく。先週、五年生を土壇場でノートライに封じたり、今日のタッチラグビーで大逆転を演じたりできる四年生にはできるということが「わかった」ような気にさせるものがありました。

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