カテゴリー: '16-6年生チーム

四年生の『U理論入門』(出現する未来からの学習)

先週はグラウンドが確保できず中止となったため、生徒とは2週間ぶりの再会です(28人出席)。心配だった天気も曇り空で涼しい中練習できました。1時間ほど前に現れたY5が一回り大きくなって戻ってきました。彼はライン引きを自分からやりたいと言って手伝ってくれました。久しぶりに参加してくれたなでしこレスラーH29も背が伸びたような気がしました。

練習前に、3か月一緒に頑張ってきた国を解散し、新しい国を作り、新メンバーを発表すると説明したところ、R15は「やったー!」と正直に大喜びしていました。久しぶりに彼の白い歯を見たような気がします。「おい!仲間に失礼やろ」と笑いながら諭したら彼も反省していましたが、待望の新メンバーに期待を膨らませている様子でした。

旧メンバーと最後の練習の開始です。今日は、中学のコーチに教えていただいたポールを使ったランニングのトレーニングを行いました。と言っても高価なポールは無いので、わが四年生に豊富にある人的資源を活用して、人間ポールで練習しました。

直径3メートルの円をコート内に縦6個×横4個ぶどうの房状に描き、まずは、その円周を八の字ランすることからスタート。4人同時スタートでスワーブを切るスピードを競いました。コーチもやってみましたが、もう四年生には勝てません。速いです。

次に24個の円の中心に一人づつ立ち、4人が同時に一直線上に並ぶ6人をジグザグに走り抜ける練習を行いました。棒立ちの生徒は「キャーキャー」奇声をあげてランナーとぶつかりそうなスリルを味わっていました。非常にボディバランスのよい生徒が多く驚きました。ジグザグ以外では、尺取虫のように前の棒立ち生徒にタッチしてスタート地点に戻り、次の生徒にタッチして戻ることを繰り返す練習をやりました。これは3週間空いていたM19にはこたえたようです。

同じ状態で、ランナー二人が横2列を大回転して速さを競ってもらった後、ボールを使い、クロスした時にボールをパスするプレーをやってもらいました。ほとんどの生徒がタイミングよくボールをパスしていました。即座の習得ができています。

本当のポールがあればもっとバリエーションを増やして楽しめそうなので、MKTコーチに制作してもらいましょうか。

この後、コートのタッチライン側から5M毎に一人一人出てくる7人のディフェンダーをうまくかわしながらアタッカー7人がボールを繋ぎながらトライを目指す練習で仕上げとしました。驚いたのは、これまで近くにいる生徒しか視野になかったものが、遠くにノーマークでいる生徒にロングパスができるようになっていたことです。

そんな彼らを見て3年前の伊丹での茨木RSさんとの試合を思い出しました。その試合のラスト3分は、J22など出場していた生徒が「ゾーン」にいた、あるいは「フローの状態」で、プレッシャーからのボールの争奪後、ノーミスでパスが継続され、トライに繋がるというラグビーの醍醐味が凝縮されていました。例えるなら、未来から「降ってくる」感覚と、当時ここに書いたと思います。優れた人やチームの内側から何かが溢れ出ている状態のことを「未来が出現しようとしている瞬間」ととらえ、「出現する未来からの学習」を論理的に説明する「U理論」についても当時少し触れました。旧来の「過去からの学習」では為しえない複雑な問題を解決するときに使われる考え方です。

今年出版された表題の本は、MIT(マサチューセッツ工科大学)上級講師、オットー・シャーマー博士が提唱した「U理論」を日本人にわかりやすく解説した入門書です。著者の中土井氏という日本のU理論第一人者は、この本の中である高校のラグビー部をたとえに、「未来が出現しようとしている瞬間」を解説しています。ラグビーにあてはめてもらうとわかりやすいので、この偶然に感謝です。このたとえとは、ドラマ『スクール☆ウォーズ~泣き虫先生の7年戦争』やNHK『プロジェクトX』で取り上げられた伏見工業高校の有名な成功ストーリーです。

過去の延長線上にはない、全く新しい可能性を迎える起点となる瞬間(未来が出現する瞬間)がまさにあの名場面、当時京都の強豪校花園高校に「0-112」で大敗した選手たちがベンチに戻ってきた時、これまで山口監督に最も抵抗していた生徒が「悔しい!」と叫び、泣き崩れ、それにつられて20人の部員全員も泣き崩れるシーンだと言います。ここで重要なのは生徒たちの変化だけでなく、これまで「俺は全日本の選手やったんや!俺の言うことを聞かなかったお前たちが悪い」という考えに凝り固まっていた監督の心を180度転換させ、生徒の「目玉」から自分が見え、開かれた心にアクセスできたことだと言います。「無茶苦茶やられて悔しいやろうな。歯がゆいやろうな。情けない想いをしているやろうな。俺は今までこいつらに、何をしてやったんや!」「本当にすまん」という言葉の発露が、一年後の同じ大会での決勝戦での再選、18対12の劇的な勝利、さらには、今に繋がる強豪校となるターニングポイント(Uの文字の一番底の部分)だったということです。(これを書いていてコーチ自身もゾーンに入ってしまいました)

そんな思いの中、新メンバーを発表しました。

HDM48(フォーティエイト):首相K8、国防大臣H9、外務大臣K12、財務大臣H7、国連担当官M23、世界銀行担当官D34、神J22 (7人中4人欠席だったので、国の創設者3名の頭文字を取ってつけたそうです)

あっちゃんオールスターズ:首A11、防S6、外R24、財S10、連Y5、世H32、神Y17

えいとまんじゅう:首E28、防T18、外K4、財S25、連T30、世K27、神S14

タタカウナキケン(戦うな危険という意味か):首K20、防M19、外R21、財H13、連K16、世K35、神Y3

サンダーズ(稲妻のように速くだそうです):首R26、防R15、外K31、財T2、連H29、世K33、神S1

生徒には、「みんな、ルービックキューブは知ってるよね?」「知ってる~!」と手真似でクルクル回転が始まりました。「ルービックキューブは何面ある?」H9だったか「6!」と即答がありました。「これから始まる国の国民は7人やね。7から6引いたら1。その1ってだれやと思う?」K35「首相」「その通り!首相はルービックキューブを回して3か月後に色がそろったきれいな6面を完成させる人。一人一人がバラバラで、T18とT30がいがみあってたりしたら、いつまでたっても面はそろわないね」T18、T30とも思い当たるフシがありニコッと笑ってました。

来月はいよいよ合宿です。生徒たちが急成長して山を下りる一年間で最も重要なイベントが今年もやってきます。楽しいことだけでなく、上級生や下級生に負けたりしてつらい気持ちになったり、喧嘩も起きるでしょう。そんな混沌の中から、生徒が変わり、コーチも過去のイメージを捨て去り変わっていく。そんな過去や偏見にとらわれない学習の場になって欲しいものです。

 

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4 thoughts on “四年生の『U理論入門』(出現する未来からの学習)

  1. コーチの皆様、保護者の皆様いつもお世話になりありがとうございます。
    スクールウォーズは息子が2年生の時にはまり、何度も見ておりました。偶然にも1週間程前にプロジェクトXを見せ、大木大介のモデルである『八坂の信吾』を見て喜んでおりました。当時、実話だと行って見せておりましたので、イソップの登場はなく、パニックになっておりました。
    新チーム結成ということで、合宿までの練習で各チーム、チーム力をあげ、合宿に臨んでもらいたいです。

    今からもう一回、プロジェクトX見て、嫁はんにバレないように泣きます。

    • T18父さん、
      スクールウォーズの話題はゾーンに入ってしまいますね。プロジェクトXの最後のシーン、弥栄(最初八坂神社かと思っていました)の信吾が先生になったというくだりは私もボロボロになります。
      みんな信吾のように無茶苦茶やってるようで最後は六面揃ってたといえる合宿になって欲しいです。

  2. 来ましたねぇ。スクールウォーズ、プロジェクトX。
    私はすでに何度も泣いているところを目撃され、カミサンは「またおんなじやつ観て泣いてる」とセセラ笑いますが、知ったことではありません。
    観ている側が気恥ずかしくなるほど、若者が思いっきり走り、叫ぶあのスクールウォーズこそ青春ドラマの本道っちゅうもんです。
    「おまえらそれでも男か、悔しくないのかぁっ!!」の場面は、あしたのジョーのクライマックスと比肩する『男のための男の名シーン』ですね。

    プロジェクトXで山口良治氏は、対花園高校戦を見守りながら、おれは今までこいつらに何をしてやったんやっ・・と考えたときのことを、「そのとき初めて矢印が自分に向いた!」と語っておられましたね。この、矢印を自分に向ける、というのが凡人にはなかなかできないのですね。ラグビーに関わる逸話・ドラマの中で心に残っている言葉です。

    *Fコーチが(確か)2年前?に、このレポートで書かれていた、「しかしキャプテンのことを我がことのように思う生徒はまだ稀です」との言葉も心に残っているものでして、いつかまた子ども達の活動を通じてこのブログでそのことに触れられることがないかなとひそかに楽しみにしております。

    *3年前のあのノーミスでつながったトライ、私も覚えてます。確か、T18→T2→S14→J22→H13とつながったトライだったかなと。途中退場したT18が再び参加するや、まさしく鬼神のような奮闘ぶりでしたね。

    夏合宿で子どもたちが成長してくれんことを!
    そしてまた、願わくば我々保護者も。

    • S14父さん
      久しぶりのご投稿ありがとうございます。
      なるべく多くの生徒に首相やキャプテンを引き受けて貰って、リーダーのワクワク感や仲間を纏める難しさを実際に経験して欲しいと思っています。そうして初めてキャプテンに共感できるようになると思います。
      息子さんのさらなるリーダーシップを楽しみにしています。