カテゴリー: '16-6年生チーム

三年生をデザインする『流れとかたち』

茨木交流試合で4勝1分1敗の好ゲームを演じた生徒たちが練習グラウンドに帰ってきました(出席29名)。E28は同じ学校の仲間Daiki君を体験で連れて来てくれました。今日試合をしている中学三年(1勝1敗の素晴らしい試合だったとか)のスーパーアスリートと同じ名前、しかも少し説明しただけでラグビーになっている勘の良さと持ち前のハンドリング、スピードはコーチ陣垂涎の的。何としても33人目の仲間になって欲しいものです。

30人の熱気ムンムンの中、先週の試合のレビュー。ラグビーノートにできたこと、できなかったことを書いただけでなく、気づいたこと、できなかった理由など詳細に分析している生徒がたくさんおり、焦点を絞ったレビューができました。その中で、1点も取られなかったチームとたくさん取られたチームの違いについて考えて貰いました。個人面では「声が出ていなかった」「前に出ていなかった」という反省点が浮き彫りになりました。ではチームとしてどうか。この点についてはY3が気づいていました。「チームワークがなかった」。

チームワークについて考えてもらうために先週の3チームに分かれ、インパルスをやってもらいました。両手をつないでスタートの生徒から左隣の人の右手を左手で握り、握られた生徒が左隣の生徒に同じことをし、1周する速さを競います。何回やってもチームフィロソファーが一番早くインパルスを伝えていました。チームワークのあるチームは電流が早く流れるとわかった生徒たちに、「人間の流れってなんだ?」と問えば、「血液」、「ご飯」と以前質問した通りの回答がありました。「この流れがないと人間は死んじゃうね。流れというのは『生きたい』ということだね」。ではチームが生きているというのはどんな状態か考えてもらいました。これについてS1が一行ノートに大きな字で記入していました。「勝つことだけを考える」。

生徒たちには、よい流れをもったチームは強い、よい流れとは練習前から始まっている、時間通りに集まる(Y17は少し遅れたけど、他市の自宅からお父さんと何キロも走って来たそうなので、すでに大粒の汗とともに流れを作っているということ)、個人スキルを磨く、ユニットスキルを高める、そして最後にチームスキルアップに繋がるミニゲームなどをする、そうした流れ(こういう個人、ユニット、チームが組み合わさり、アンサンブルとなってプレーすること)がラグビー成功の秘訣だということを話して、個人スキルから練習開始です。

1.パス:15M四方のダイヤモンドに見立て合宿から始めた3人のパス練習。この練習のキーファクターは、両手をあげて(ハンズアップ)→パスされたボールを取る→(対面と次のパスする仲間を)見る→パスすること。これをこれからずっと忘れないように、「て(手)・と(取る)・め(目、見る)・パス」ということにしました。「てとめパス」です。この順番を間違えてノックオンをする選手は小学生に限らずトップリーガーにもいます。一生モノの基本を大事にしたいものです。

これでパスの通りが良くなったところで、生徒を集め、ボールのもらい方について画用紙に描いた攻守陣形図の2つのケースを比較して考えてもらいました。まず一つ目のケースは、スタンドオフ(フライハーフ)が(外側に)流れてボールを取るケースと二つ目は、このスタンドがパスを出すハーフの方に(内側に)取りに行きボールを取るケースです。ほとんどの生徒が後者のケースが望ましいと手を挙げていました。なぜか。図を見れば一目瞭然。流れてもらうと、スペースがどんどん小さくなってしまい、ディフェンスの思う壺となってしまうからです。

2.2on1のアタック・ディフェンス:「手と目パス」の意識を持ったところでアタック2人対ディフェンス1人の状況でディフェンスを抜く練習を行いました。アタック練習だけでなく、ディフェンスもアタック側に一つの方向しか見せないトラッキングを意識する練習となります。最初はアタッカーの正面あるいは2人の真ん中に立ち、両サイドの攻撃に備えようとしている生徒が多く、どちらにもディフェンスに行けないまま抜かれていましたが、徐々に早く出てスペースを消す動きが出てきました。

3.ストリートボール:4対4でトライラインのコーナーからボールを出して4人でトライを狙う攻防を繰り返す練習。トライ、タックル成立、ノックオンなどの場合、コーチの「ターンオーバー」の声に素早く反応し、攻守を5回変え、頭を瞬時に切り替える実践的な練習です。3本目あたりから疲労が見えはじめ、ディフェンス網がばらばらになっているチームがありましたが、よく頑張りました。

4.最後にチームフィロソファーとチームマッスルの間でミニゲームを行い、チームセイバーは当たりの練習を行いました。ゲーム結果はフィロソファーの圧勝。流れを感じさせる展開を繰り広げていました。

動くものはすべて、時がたつにつれて進化する流動系であり、流れを良くする形と構造を生み出す普遍的な現象であるとするコンストラクタル法則によれば、「動くものであるスポーツも進化を続ける流動系であり、この法則を使えば未来が予測でき、勝者になるべく運命づけられている集団もあれば、敗者で終わる集団もある理由がわかる」といいます。身長約196㎝のウサイン・ボルトと身長約193㎝のマイケル・フェルプスが北京オリンピックで勝利すると予測した論文を大会前に専門誌に送ったという掲題の本の作者エイドリアン・べジャン教授は、他の要因がみな同じならば、体が重くて背の高い(重心が高い)者が陸上短距離走で最も有利と結論つけています。因みに、胴長の日本人は重心が低い分、競泳に有利だと推論しています。じゃあ、うちの子にはラグビーでなくて水泳をさせようというのは早計で、ラグビーはチームスポーツ。チームとしてよい流れを続けていれば自ずと強い集団がデザインされていくとこの教授は述べています。よい流れをつくる練習をし、流れるようなゲーム展開のできるチームをデザインする。今日の生徒たちを見てきっとできると思いました。

生命は動きであり、この動きのデザインをたえず変形させることだ。生きていることはすなわち、流れ続けること、形を変え続けることなのだ。形を変えていく流れは、地球全体の流れをよくするように進化する。「多から一へ」だ。

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