カテゴリー: '16-6年生チーム

もしも三年生が『経営センスの論理』でラグビーを考えたら

「その場の状況が許す範囲内で、最大限の得点を挙げて」(『スキルフルラグビー』元ウェールズ代表レイ・ウィリアムズ著)辛勝したウェールズの熱い戦いに生徒達も興奮は隠せません。今日集まった30人(2人病欠、2人体験参加)のほとんどが花園で生観戦かTV観戦していました。レッドドラゴンズ・チームを作って親近感が増したラグビー強国ウェールズ(世界ランキング5位)相手にブレイブ・ブロッサムズ日本(同15位)が勝利に最接近した(それまでの最接近は、1983年10月、ラグビーの聖地カーディフでのジャパンの死闘が24-29の5点差。あの夜は学生寮のTVに釘付けになりました)ことは、ずっと彼らの記憶に残ることでしょう。そして、この30人の中からいつかはウェールズを撃破する代表選手が出るかもしれず、コーチの責任は重大です。今日も心してコーチング開始です。

今日は天然芝のグラウンドに昨日より10人増しの参加者で熱気ムンムン。出欠を取ると全員から代返の大きな声、声、声。昨日運動会のため欠席だった3人が80M走で1,2位の好成績を挙げたようで、走りに自信がついた顔も見られました。彼らと同じ小学校から体験の生徒1人とU小学校「四天王」に5番目の追随者(そうなれば古いけど「ゴレンジャー」か)が参加してくれ、一人からは練習の最後に「来週もまた来たいな」と嬉しい言葉がありました。R15の「4年生で40人」構想も夢ではなくなってきました。この他、体験の参加者以外に、スクールOGで日本女子ユース代表選手も帰省の機会に三年生の練習に参加してくれました。

今日も「頭を使う」練習を行いました。昨日参加できず知らない生徒が多かったことから、昨日と同じリレーを行いました。昨日よりさらに提出が多くなったラグビーノートに「頭をつかうれんしゅう」と書いている生徒が多く、コーチも「(肉体的に)頭なんか使ったかな?」と頭上に疑問符が浮かびましたが、彼らには頭を鍛えることが新鮮だったようです。昨日参加した生徒に模範演技をやって貰い、さあ本番。K20がノートに書いたように頭脳プレー(相手に遅れても慌てず、反対コーナーにあるボールを素早くピックアップ)で逆転の走りを見せてくれました。初めての生徒が走る横に付き添って、細かく指示を出していたM19など自然発生的にチームプレーが生まれていました(これです、これ)。優勝決定戦では、アンカー女子ユースジャパンを退けてT18チームが勝利!おみごとでした。

水分補給の後、全員裸足になり、タックルの基本練習を徹底して行いました。天然芝はふかふかで生徒は痛い思いをすることなく、何度も倒し、倒されてコツをつかんでいました。膝つきタックルを左右、正面から行った後、立ち上がった状態で、フロントタックルに入る練習を行いました。ユース代表からタックルのキーファクターを直接伝授。相手の脚の間に足を入れ⇒両腕で相手の両腿をしっかりパック⇒最初に踏み込んだ足とは反対の足をグイっと前に出す⇒倒したらすぐに起き上がる。なかなか相手を倒せない生徒には、反対の足を前に出すと簡単に倒れるよ、と優しくアドバイス。その通りにやってみると、うまく倒せるようになっていました。

ここでレスリング大会を開催し、三年生で誰がいちばんタックルが強いかを競ってみました。二つの組に分かれて、一つの組では最重量選手Y5が予選チャンピオンになったので、他方の撫子レスラーH29と勝負して貰いました。結果は36KG級の大男を低いタックルで倒したH29(24KG級)の優勝!体幹ではK12(行事が続き、ほぼ1ヶ月ぶりの参加。全体練習前のラダーでは急速にスピードアップしており驚きました)が最強ですが、H29も負けていません。背筋がピンと伸びて相手に突き刺さるタックルは体幹の強さあってできること。全員のH29を見る目が変わったパラダイムシフトの瞬間でした。

飲み込みの早い生徒達に、次はハンドオフをしてくる相手にタックルをする方法をユースジャパンに手ほどきして貰いました。ハンドオフをしてくる相手の腕を、自分の内側の腕で上から空手チョップのように切りつけ払った後で、素早く低い姿勢になってタックルに入る。コーチもタックルを受けて見ましたが、腕を切られた瞬間、足元に衝撃が走りました。試合中に散見されたジャージーを掴んで振り回すようなプレーについて助言を乞うたところ、「捕まえているということは自分の場ができているということ。あとは素早く足首を両腕でパックすれば倒れるよ」とさらり。前回の試合でちぎっては投げペナルティとなったK16が、助言を受けただけで綺麗なタックルができるようになりました。

最後に前回のチームに分かれてミニゲームを行いました。レッドドラゴンズにアナキンは善戦をしていたようです。試合の合間に、ルークチームはブレイクダウンの練習を行い、相手より低い姿勢でオーバーすることで相手を押し返すことに気づきました。OGは今月から女子日本代表と一緒にアカデミーの練習をしているだけあって、最新のスキルを教わることができました。

小学生でラグビーをする期間、いちばん大事なことは、ラグビーによる事故を未然に防ぐためのフィットネス作りと適応性の練磨であると言われます。ゲームを継続していくために必要なテクニック(パス、キック、タックルなど)だけでなく、判断力、勇気と力の備わったスキル(実技的技能)を磨くということが大事な時期という考え方です。先ほどのハンドオフをしてくる相手に行うタックルのように、スキルを学んで自分のものにできるよう、三年生にはこれからもスキルを身につける実戦的な練習を中心に行います。スキルはコーチなどの指導あるいは外部エキスパートのアドバイスで上達するでしょう。しかし、将来日本をリードしていくであろう三年生にはスキル習得だけでなく、ラグビーのセンスを高めて欲しいと願っています。社会人のTOEIC(英語テスト)のように、スキル習得には学びのプログラムが用意されていますが、センスは他者が育てるものではなく、本人がセンスあるラガーパーソン、人間に育つしかありません。スキルをいくら鍛えてもすぐれたリーダーを育てることはできないと言われるように、チームにとって優れた戦略やチームの進むべき方向性を示すためのマニュアルはどこにもありません。キャプテンの経験の中で、自分ならこう考えるという思考のスタイルを身につけていくしかないでしょう。このスタイルこそがセンスということかもしれません。

3年前上梓した『ストーリーとしての競争戦略』の作者楠木建氏は表題の近著で、経営者のスキルとセンスをまず区別して考えることが必要と書いています。経営をラグビーに置き換えるとスッと腑に落ちる洞察に溢れる内容で、一読の価値ありです。

「スキルというのはアナリシス(分析)的発想の産物だ。組織の中で分業が進む。個別の担当分野ごとに担当者がいる。そうした人々が担当業務を遂行するために必要となるのがスキルだ。(中略)これに対して、戦略の本質はシンセシス(綜合)にある。スキルをいくら鍛えても、優れた経営者を育てることはできない。スーパー担当者になるだけだ。」

ラグビーの知識をやみくもに蓄積させるのではなく、全く性質の異なる「AとBを繋げたら面白いかも」といった発想を三年生には持たせたいと思います。そこで「ハッとする」パターンに気づいてくれれば、その生徒はリーダーの道を歩む第一歩を踏み出したようなものです。

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5 thoughts on “もしも三年生が『経営センスの論理』でラグビーを考えたら

  1. コーチの皆様、連日のご指導ありがとうございます!!
    にもかかわらず、土曜日は早退失礼いたしました。
    W杯の会場に立候補しているとはいえ、なかなか花園でこんなゲームを目にすることはできないので、可能な限りの体験をさせてやろうと思いまして勝手させていただきました。
    先週のレッドドラゴンズ勝利に始まり、日本代表の追っかけサイン入手、テストマッチまで実に濃厚な一週間を過ごしたR15。何か感じるものがあったのではないでしょうか。
    今後の言動に注目です(^_^)

    臨時コーチ、忙しい中駆けつけていただきありがとうございました!!ますますのご活躍をお祈りいたします!(^_^)

    で、臨時コーチの「空手チョップ」。
    実は私の頭の中は「????」なんです(^^ゞ
    Fukushimaコーチ、DVD鑑賞会の時に手ほどきよろしくお願いいたします(*^^*)

    • R15父さん、
      長くて熱いドラゴンへの道でしたね。アチョ~とは言わずに手を切るハンドオフ封じタックルは効果的です。では明後日お会いしましょう。

  2. いつも子供達に、創造的でありながら解りやすいご指導いただきコーチの皆様ありがとうございます。テクニックだけでなく、センスのあるラガーパーソンに成長して行ってほしいものです。自ら考え、それを実践する行動力と仲間と共有出来るコミュニケーション能力を彼ら、彼女達は身につけてくれると思います。そんな中からジャパンラグビーを牽引していくプレイヤーが出てきたらいいですね。子供達を見ていると自分のことのように夢がひろがりますね。

    • ISHIHARAさん、
      コーチをしていると子供たちに教えられることが多いですね。センスを磨かないといけないのはコーチかもしれません。
      校長の提唱するよりシンプルでよりやさしいラグビーを追及していきましょう。

      • ありがとうございます。simple and easy rugbyですね。そのプリンシプルを胸に今週末、香川に行ってまいります。いつも、我が子放ったらかしで、皆様にご迷惑おかけして申し訳ありません。