カテゴリー: '16-6年生チーム

『花園が燃えた日』の三年生

まだ6月初旬というのに真夏日となった土曜日、先週の試合で一回り成長した生徒達(20人出席)が天然芝に戻って来ました。今日はラグビーノート7冊(過去最多)の提出があり、先週の試合でできたこと、できなかった、あるいは、気づいたことをコンパクトにまとめていました。中でも、ラガール2人の洞察は鋭く、前回WOM受賞のK16は、味方が近いところに固まり過ぎだったり、声が出ていなかったとラブリーな挿絵付きながら手厳しい。もう一人新人H29は、試合で身をもって体験したモールとラックについてお父さんとおじいさんに聞いたそうで、うまく違いをまとめていました。練習前に、再確認のため、モールとラックの違い、それぞれアンプレイアブルになった時、どちらのサイドのボールになるか生徒に考えて貰いながら解説しました。ラックアンプレイアブルではマイボールとなるものの、三年生が目指すラグビーはできるだけ立ってプレーするラグビー。そして、頭を使ったラグビーということだけ強調して、全体練習を開始しました。

ミニハードル、ラダーを計6本用意し、その回りに15M四方の四角形をコーンで示し、関西協会推奨のウォーミングアップメニュー・ラインパスグリッドを行いました。20人を2組に分け、このグリッドでリレーを行いました。その間、リレーの順番を待っている生徒はラダー、ミニハードルを3本走ります。ラインパスグリッドは、一辺の中央から2人が違うコーナーに走り、コーナーのボールをピックし、次のコーナーにダウンボール。次の辺の中央に置いてあるボールを先に到着した生徒がピックし、先ほどダウンボールしたコーナーにそのボールをダウンボールし、次のコーナーまで折り返します。もう一方の生徒は次のコーナーにあるボールをピックし、先ほど相手がピックした中央部にそのボールをダウンボールし、折り返します。ここから両者はそれぞれのコーナーに相手がダウンボールしたボールをピックして次のコーナーまで走り、ダウンボールし、次の生徒のところまで走り、これら一連の動作を残り9人が続け早くゴールした方が勝ちです。最初戸惑いながらも、2回戦以降はそつなくこなす覚えのよさはさすが成長著しい三年生。今の中学三年生が五年生の頃、行っていたこのウォーミングアップが既にできるのなら、頭を使ったラグビーもどんどんできそうです。

この後、2v1の状況でのディシジョンメーキングの練習をしっかり行い、最後はウェールズラグビーユニオンがU9の練習メニューに推奨するエンドボール(10v10で5回パスをしながら相手ゴール内にいる味方キーパーにパスを通して得点とするゲーム。5回パスは豊中三年生ローカルルール)で今日の練習は終了です。

今日は練習時間を30分切り上げて、多くの生徒が日本vsウェールズのテストマッチ観戦のため花園ラグビー場に向かいました。コーチも、電車で東花園駅に到着。なんと既に駅構内改札までの通路、階段に立錐の余地もないほどの人で溢れかえっていました。花園ラグビー場でも、入場しようとする人があの広い広場全てを埋め尽くすほどの盛況ぶりでした。競技場内は正面、バックスタンド共に満員状態で、ゴール後方に若干空席を残すのみでした(暑い上に大混雑の中、チケットを配布されたH13のパパ大変お疲れさまでした)。

こんなに観客を詰め込んだ花園は93年に改装されて以来初めてかもしれません。しかし、改装前を含めれば、今日以上に観客がつめかけた試合があったそうです。改装前の古めかしい花園第一グラウンドの公式収容人員が1万2千人のところに、なんとその試合には2万1千人以上がつめかけたとのこと。その試合とは、今からちょうど四半世紀前、1988年元旦の午後2時45分にキックオフされた全国高校ラグビー大会3回戦で、古豪大阪府立北野高校と新勢力京都市立伏見工業の両校がベスト8をかけた一戦だそうです(詳しくは、先月出版された表題の本を是非お読みください。日本ラグビー相関図がこの一戦に凝縮されているかのようです)。

北野高校の当時の監督は言わずと知れた我らが豊中RSのJ元校長。上述の本には、TVドラマ『スクール☆ウォーズ』のモデルとなった相手校監督のイングランドジャージー(パンツは勿論ポケット付きのアンブロ製)を纏った精悍な写真とは対照的に、慈愛にあふれる赤ひげ先生の風貌。元校長がずっと指導されてきたあのワンフレーズも本に記載されていました。タックルに入る時は「目を開けていけ」。

監督だけではありません。その試合で北野側タッチジャッジを務めたのが、レフリングでお世話になっているプロフェッショナル・トップレフェリーH氏。その日、北野OBとして旗を持ったことがきっかけとなりレフェリーを志したというエピソードだけでも唸らずにはおれませんが、なんと同氏は今日のウェールズ戦のタッチジャッジも努めていらっしゃいました。

今日あわや大金星というところまでレッドドラゴンを追い詰めたジャパンのキャプテン(試合には出場せず)が北野OBで、この伏見工業戦でWTBとして大活躍した現大阪市長と同じポジションの後輩。一方、NZから一時帰国し今日の試合で切れ味鋭いパス捌きで観客を魅了したSHが伏見工出身。

因縁めいた話はそれだけではありません。この二つの熱戦ともに、前半わずか数点リードしたチームが結局は敗者となったこと(敗因も名手キッカーのよもやのペナルティゴール失敗)、そして、最終的に得失点差が同じ4点差だったこと。

これら諸要因が重なったからかどうかはわかりませんが、今日も間違いなく「花園が燃えた日」だったと後世に語り継がれることでしょう。三年生の一人(先週の試合で「レッドドラゴンズ・チーム」で大活躍)が無意識に爪を噛むような仕草で食い入るように熱戦のゆくえを見つめている姿が印象的でした。

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