秋の運動会到来というのに30度を超す真夏日。季節外れの猛暑にもめげず、28人が元気に走り回りました。1人は怪我のため見学。
早いもので生徒たちは間もなく10歳を迎えます。10歳前後には、ほとんど大人と同様の脳になるため、この時期にはガンガン勉強させてもかまわないそうです。ただし、「勉強しなさい」と親に言われることを非常に嫌がるようになる時期でもあり、子供の自尊心を刺激してあげることが大事です。おだてるわけではないですが、自分が選択したことをやると決め、実行したことを高く評価したいものです。またこの時期はこれまでも過去のレポートで書いた通り良い習慣によって記憶力が高まると言われます。具体的にものを覚える際は、複数の情報を重ねると記憶が強くなるそうですから、子供がなかなかものを覚えられないという場合、興味を持って情報をたくさん集め、重ねられる環境作りの手助けをしたいものです。記憶を重ねる方法は、理解し、考え、体験すること。
今日は午後からトップリーグ観戦ができる機会がありましたので、午前中にある宿題を生徒に与え考えて貰い、午後の試合観戦で「手と目」(三年生の合言葉でもあります)を動かす体験を多くの生徒にして貰いました。ある宿題とは、「好きなチームがボールを相手チームに取られるのはどんな時?」という問です。
全体練習の前に生徒全員を集め上述の質問をしました。「はい!」とたくさん手が挙がります。「タックルされた時」、「パスミスした時」。他には?・・・「キックをした時!」。素晴らしい。三年生にしてすでにキックをすることは相手にボールを持つ権利を与えることだとわかっています。大学生でもわかってないシーンをテレビ中継でよく見るというのに。
生徒には、相手にボールを取られた回数を「正」の字で記入する表を渡しました。はたして花園でちゃんと記入したのか、気になるところですが、強制するとやる気を失うお年頃。そっとしておきます。コーチはこれから深夜の放映(神戸製鋼VSトヨタ)で自己採点してみようと思います。TRSの二人のOBは出場していたでしょうか?
これからの練習は、考える生徒と考えないで漫然とプレーしてしまう生徒で差が出てきます。新しい生徒には大変ですが、なるべく簡単なメニューで考える習慣がつくように心がけたいと思っています。
まず、2人一組になり向き合い、一人がボールを空中に放った瞬間にもう一人が別のボールをパスします。そのボールをキャッチした後、落下してきた最初のボールもキャッチできたら合格です。今日は3人が「できた!」と喜びの声をあげていました。四年生になれば、3人でランパスをしながら真ん中の生徒が別のボールを空中に放る練習も考えています。できるかな。
次に「手と目パス」のおさらいとして4人で左タッチライン沿いのスクラムからハーフがバックスにパスを供給するところから始まるランパスを行いました。バックスは全員ハンズアップ、ボールが来る方向へ身体を向けキャッチ、次の仲間を見てパス。あともその繰り返し。慣れてくると縦に速いスピードで切れ込みゲインラインをあっという間に突破する生徒も現れました。スパイラル(スクリュー)パスは強制ではないものの、左方向に矢のようなパスができる生徒が何人もいることに驚くばかりです。
さらに実戦的な練習も取り入れ、バックス3人で相手バックス3人のディフェンスがある中でゲインラインを抜く練習を行いました。20年ほど前早稲田が取り入れようとしてワークしなかった戦法です。賢者は歴史に学ぶ?
ミニゲームの前にタックルの練習を行いました。2人一組で向き合い左右胸当てを行い、一方が急に膝を落としてタックルに入る練習です。これは新人のK31が0.1トンコーチ相手に激しいタックルを見せていました。格闘家パパの秘密特訓の成果と見た。
最後のミニゲームでは、怪我で練習できないA11に冒頭の宿題で使用する記録表作成を依頼し、快くスコアリングをしてくれました。スコアと言っても得点ではなく、どんなプレーで相手にボールを取られたかのチェックです。最初の試合では、負けたチームがタックルされた後3回もターンオーバーされていました。後はパスミス1回のみでした。試合をした両チームを集め、A11の結果を見せたところ、両チームとも何が原因で勝敗がついたのかわかった様子でした。
芥川賞作家保坂和志氏(ちょうど新作『未明の闘争』が出たところ)が表題の対談集の中で単に情報だけを取り入れても思考力は磨けないということを野球選手の例でこう述べています。
野球選手にとって動体視力を上げるのは、バッテリーが配給を考えるのと同じだけの価値を持っている。だから野球選手にとっては動体視力を高めるのも思考の一環になる。思考力っていうのを、ただ理性的なものとか、論理的なものと考えちゃいけない。思考するっていうのは、その人が世界と触れ合うと捉えないといけない。
この作家、昨今のオリンピック選手や相撲取りをスカウトするチェックポイントについて痛烈に批判しています。相撲なら「体が大きい」。女子ラグビーなら身長170㎝以上のことか。「ほんとうはもっと強い人っているはずなんだけど、網の目からは漏れてしまう。」そんな東京オリンピックにならないとも限らないとコーチも考えてしまいました。