コーチは夏合宿から1ヶ月半ぶりの参加で懐かしい生徒達31人と再会できました(1人欠席)。ただし、出席の1人(A11)はラグビー以外で骨折してしまい完治まで相当時間がかかるようです。合宿で大活躍し秋のシーズンが本当に楽しみでしたが、あせらずゆっくり治して、ラグビーができる喜びを来年たっぷり味わってほしいものです。
今年度上半期は好天続きでしたが、下半期は週末崩れる天気のサイクルで茨木定期戦まで2回しか練習できませんでした。今日雨という天気予報に反し曇り空で練習できたのはラッキーでした。
練習時間90分という限られた中で、合宿のおさらいです。合宿で集中して取り組んだ課題のタックルでは対面との対峙の仕方、ギャップを作らないように仲間と平行にアップを意識して3:3のアタック・ディフェンスを行いました。野球のダイヤモンドに見立て、四角形の各辺に4人が等間隔に立ち、コーチが「1塁」と呼べば、1塁上の生徒がハーフ役としてホームあるいは2塁方向のいずれかにパスして攻撃を開始し、対面の4人が防御することを何度も繰り返しました。合宿後半で始めた練習を思い出して即座にできる順応性が高まっています。
次に相手にスペースを消され囲まれた時にヒットで前進する際のコンタクトの仕方をおさらいしました。1:1のコンタクトができたところで、2:1でアタック側のサポーターの入り方を初めて練習しました。初めてながら前のボールキャリアーのお尻に肩をつけてうまく前進させることができました。
最後に合宿で最も印象に残ったと感想文に書いていた「ポケット」練習を行いました。早大ラグビー部の名監督として知られる日比野早大名誉教授は近著『誇りをかけて』でこう書かれています。
監督が「こうすれば勝てる」という戦法を明示し、部員も「それならできる、必ずやり遂げてみせる」と誓って、一年をスタートする。敗れたときには、何ができなかったのかを掴み出して、新しいスタートを切らなければ、同じ轍を踏むことになる。敗戦には、次の勝利へのヒントが必ずあるはずだ。
コーチから明示された「ポケット」戦法に生徒たちが次の試合で使ってみたいと感じ、一生懸命取り組んでみる。そんなワクワクしたポジティブな気持ちで試合に臨めば、たとえ作戦ができなくても、勝利のヒントを掴み、チームが一つになっていくような気がします。余談ですが、この本に最も多く登場する日比野氏と同期入学の早稲田OB片倉氏。同じ日にラグビー部の初練習に参加し(定刻に行ったのに「遅刻」という早稲田の厳しさを物語るエピソードも書かれています)、ジャパンでも一緒に活躍された方ですが、お孫さんが三年生の生徒にいるというのもラグビーの不思議です。
練習終了後にメンバーを発表しました。今回は3チームで6試合を戦います。
応援団長:A11
チームフィロソファー(賢者)vs茨木A(第9試合)、徳島(12):S1(チームキャプテン=TC)、T2、S6、Y17、T18(ゲームキャプテン=GC)、M19、S25、R26(イメージキャプテン=IC)、K27
チームマッスル(筋肉)vs徳島(4)、寝屋川(10)、:K4、K8、H9(TC)、S10(GC)、K12、S14、R15、K16、K20、J22、T30(IC)
チームセイバー(守護神)vs寝屋川(1)、茨木B(11):Y3、Y5、H7、H13(GC)、R21、M23(TC)、R24、E28(IC)、H29、K31、H32
心は最大の味方でもあり、最大の敵でもある。生徒には合宿のミーティングでゲームを決めるのは天候や相手などの外部環境ではなく全て自分の内面の捉え方で決まるという話を繰り返しました。生徒が自分自身をどれだけコントロールしているか、生徒の心がどれだけ生徒自身にプラスに働いているかを示す指標を「ポジティブ・インテリジェンス(PQ)」と呼ぶそうですが、その発案者シャザド・チヤミン氏が表題の近著で、PQを改善する方法を三つ提案しています。
方法①:妨害者を弱める
生存脳(生き残りを目的とした脳の領域)の主たる原動力となる妨害者は、たいてい自分を正当化し、あたかも味方であるように、極端な場合には自分自身であるかのようにふるまう。本書ではこの妨害者のボスを心の中の「裁判官」としてわかりやくす説明しています。まず、この妨害者の思考や感情が現れたら「また、裁判官が現れて、おまえは失敗すると予言している」と言い出したと冷静にラベル付けすることで、妨害者を弱めることができるそうです。ここからチーム名をセーバーとしました。
方法②:賢者を強める
自分の中の妨害者を弱め、賢者の視点に切り替え、試練に出会うたびに賢者パワーを借りて解決法を見つける。作者はこの賢者の視点の好例を最後に中国の有名な故事で例えていますので、最後に紹介します。日本でも有名な故事成語になっています。賢者パワーは共感力、探究力、革新力、方向づけ、実行力の5つとのこと。ここからチーム名はフィロソファー。ハリーポッター賢者の石のことは全員知ってると手を挙げていましたが、その賢者のことだよと言えば、口を横に開いて難しい「フィ(phi)」の発音を始める三年生は探究心旺盛です。
方法③:PQ脳の筋力を高める
腹筋強化のために毎日腹筋トレを課すように、未発達なPQ脳の筋力アップのために毎日反復レッスンが必要とされます。何もしないと生存脳という最も原始的な部分の反応(「戦うか、逃げるか」に焦点が絞られ、不必要な脳や身体の機能はすべて低下する)が活性化され、生存よりも成長や繁栄を目指す賢者の力は制限されてしまうそうです。そうならないために賢者の視点のもととなるPQ脳を鍛えるという考え方です。子供は生存脳とPQ脳のバランスが大人よりずっとよく、大人になるほど生存脳を利用する割合が増え、PQ脳が衰退し、たえずストレスや不安にさらされ、免疫力が落ち、寿命が縮み、幸福感も得られず、業績もあげらないと作者は断言しています。PQ脳の筋力強化法はいたって簡単で、毎日の生活習慣の中で意識を変えるだけ。たとえばスポーツをやるときは、足に体重がかかる感覚、顔にあたる風、手にボールが触れる感触などに神経を集中させてみる。上の空で考え事をしそうになったら払いのけて、ボールの回転する様子などに神経を集中させてみるだけで「ゾーンに入る」状態(何の苦も無く、流れるように身体が動いてしまう状態)が得られるようです。一年生のときテニスボールを2個積み上げる課題に取り組んだ生徒たちには朝飯前のトレーニング法です。そこでチーム名をマッスルとしました。説明が長くなりましたが。
さあ、来週どんな天気になろうが状況のせいにせず、PQ脳を高めて臨む定期戦でどんなプレーを見せてくれるのか、楽しみです。
【雄馬の物語】
年老いた農夫が十代の息子と一緒に農場に住んでいた。農夫は美しい雄馬を飼っていて、愛情込めて世話をしていた。農夫はこの馬を年に一度の地元の品評会に出品した。馬は一等賞をとり、隣人たちは快挙を祝おうと集まってきた。農夫は静かに言った。「何が良くて何が悪いかなど、誰にわかるだろうか」。農夫の反応の意味がわからないまま、隣人たちは帰って行った。
翌週、馬の値段が上がったことを知った盗賊たちがこの馬を盗んだ。隣人たちが農夫を慰めようとやってくると、農夫はやはり冷静で落ち着いていた。「何が良くて何が悪いかなど、誰にわかるだろうか」
数日後、暴れもののこの馬は盗賊たちを振り切って農場に逃げ帰り、途中で仲良くなった野生の牝馬を数頭連れてきた。興奮して祝福する隣人たちに、年老いた農夫はまたも言った。「何が良くて何が悪いかなど、誰にわかるだろうか」
数週間後、農夫の息子が野生の牝馬の一頭を調教しようとして振り落とされ、足を折ってしまった。隣人たちがお見舞いに訪れると、農夫はまたも言った。「何が良くて何が悪いかなど、誰にわかるだろうか」
翌週、皇帝の軍隊が村にやってきて、勃発したばかりの戦争に若者たちを引っ張っていった。老いた農夫の息子は足を折っていたので徴兵をまぬがれた。隣人たちにはもはやお祝いに訪れたりしなかった。農夫の反応がわかっていたからだ。「何が良くて何が悪いかなど、誰にわかるだろうか」