もうすぐ三年生になる『未来を拓く君たちへ』

前日に春一番が吹いたとは思えない吹雪の中の練習となりました。春一番がもたらした豪雨でも箕面の芝はしっかり水分補給し生徒たち(20名参加)を待っていました。怪我で長期療養中だったR27も今日から参加してくれました。韋駄天の走りが楽しみです。

全体練習前に6年生のタッチフットに混ぜていただき、小一時間多くの二年生が六年生やコーチ相手に元気よく走り回っていました。今日はK20が黒ビブスを装着。最初いつもの緑ビブスを身につけていたので「あれ、黒も残っているよ」と言ってみたら、嬉しそうに黒に替えていました。彼は今日もラグビー絵日記を描いて持ってきました。前回の練習で楽しかったことを絵にして感想文にまとめていました。暮れの大掃除からの絵だったかと思いますので一冊終わりそうな勢いで継続しています。それが今日の早出に繋がっているかもしれません。S25もこのシーズンに日焼けした顔が何かを物語っていますが、彼のタッチフットで見せた走りからも「やる気」のオーラを感じました。T2も練習後に駐車場前の急坂を何本も坂ダッシュしていて、最近タックルのキレが増したのは自主練の成果なのでしょう。皆それぞれ口にしませんが、お正月に続けると決めたことを続けているようです。体幹の師範K12は体幹トレーニングの新メニューでも他の生徒との「違い」を見せ、四つん這い状態から両膝だけ数センチ浮かせた姿勢で他の生徒の馬乗りに潰れず支えていました。これは今日間違って来てしまった中学二年生S君(練習に付き合ってくれてありがとう!)にもやって貰いましたが、数秒で潰れていました(コーチの体重が0.1トン近くて重かったのもありますが)。わずか2ヶ月継続しただけでこうした違いが現れてくるのですから、一年間継続したらどんな成長を見せるのでしょうか。今から楽しみです。

今日の練習はSawadaコーチから紹介いただいた豪州のミニラグビーチームのコーチングサイトに掲載してあったコアスキルトレーニングを参考にしてメニューを考えました。このウェッブサイトには、コーチの最も大事な心得として「生徒のことをよく知ること」と書いてあります。具体的には、以下の通りです。

・子供たちにいつも楽しんでラグビーをしてもらう

・子供たちにはアンストラクチャーな(おそらく、「生徒の頭の中で整理できていない」の意)プレー、広い範囲の活動に参加する沢山の機会やクリエイティビティ(創造性)を発揮する機会が必要

・早すぎるスポーツのスペシャライゼーション(専門化)は若い子供たちには勧められない

・子供たちにはスポーツの社会的な側面を高く尊重できるようになってもらう

・スキルの向上と個人の成長にフォーカスすべきであって、勝利にフォーカスしない

・すべての子供たちに時間(「チャンス」の意か)と注意を注ぐべきであって、最も才能にあふれた生徒にのみに注ぐことはあってはならない

会社でもKYC(Know Your Customer)とかCCF(Customer Comes First)が重視される時代ですが、ミニラグビーの世界も全く同じと改めて気づかされます。Know Your Children、Children Come Firstを肝に銘じて、今日も楽しい練習開始です。

まず“Number Thunder”という練習に挑戦。7メートル四方の各辺に5人づつ均等に内側を向いて並び1~5までの番号を決め、中央付近にボールを4個置いておきます。コーチのコールした番号の生徒が一斉に中央のボールを拾い上げ同じ辺の仲間とパスをするハンドリングスキルと反応力を高める練習です。最初は、一番端の仲間にパスし、パスを受けた生徒が隣の生徒に手渡しパスして中央の生徒に返すスピードを競いました。次に一人づつリターンパスを行うスピードを競いました。最後に、拾い上げたボールを後ろの仲間の誰かにパスしながら近寄って、リターンを貰い次の辺の誰かにパスをし、またリターンを貰うことを4回続けるスピードを競いました。生徒は皆、競争となると皆身を乗り出してコーチのコールを待っていました。パスの正確性も増してきています。NZ式ハンズアップも慣れてきました。あとは誰とでもパスのコミュニケーションができることが課題です。わざとノッコンするウケ狙いの生徒もいて、これも個性と見るべきでしょうか。

次に柔らかい芝の上でタックルスキルの練習です。まず、両膝をつけて直立した状態をつくり、その1M後ろに同じ姿勢の生徒を立たせ、前の生徒が膝付き前進したところを背面タックルする練習を行いました。キーファクターはヒット、ラップ(両手を相手の太腿に回して自分の手首を掴む)、ロール(寝転ばせる)。小走りで逃げる生徒に最後まで追いつかない生徒もいました。これもできるまであきらめず継続です。正面の膝付きタックルも復習したところで生徒を集め、質問しました。

「みんなはラグビーをしていてどんな時楽しい?」。沢山手が挙がり、「パス!」、「キック!」など回答が飛び出します。「じゃあ、みんなが楽しい時に持っている武器はなに?」と質問を変えれば、「闘争心」とか難しいことばも出ましたが、「内臓、ちがった大腸」とこれまたウケ狙いの回答がありました(胆力だったら正解か)。身体とか心以外に楽しんでいるとき持っているものは「ボールだよね」。「ボールがなかったらどうする?」と問えば、「相手のボールを取る」とY3。「ボールを取るにはどうする?」の質問には、S14が待ってましたとばかり「タックル!」と今日のテーマにたどり着きました。

「ということはタックルってボールを取ることが目的だよね。タックルは相手にぶつかって倒すことが目的と思ってなかった?」H9やS10も何か気づきがあったような顔をこちらに向けています。自問を繰り返すことで何かを掴んだ生徒たちに次は実戦的な練習を用意しました。これも豪州のミニラグビースクールの定番練習メニューのようです。

縦5M横10Mの長方形の長辺に5人均等に並んで向き合い1~5番の順番を決めます(反対側は1-5、2-4、3-3、4-2、5-1と並びます)。コーチにコールされた番号の生徒はコーナーの斜め後ろのコーンを回り込んで、一方は転がったボールピックし長方形の狭いゾーン内で攻撃します。もう一方は、タッチ(途中ホールド、タックルへステップアップ)で攻撃を止める練習です。ボールを取ることが目的と意識を変えただけで、生徒のタックルへの躊躇が少しなくなったようです。楽しいことができるなら少しくらい痛くても頑張るでしょう。最後に顔面同士ぶつかって鼻血を出した生徒(S6)はかなり痛かったか。でも身体をはってボールを奪いに行っていました。

最後の3分、10対10のミニゲームを行いました。レフリーが最初からラストワンプレーのコールがありましたが、生徒はゲームを切ることなく必死になって戦っていました。明日は雛祭りのお祝いを控えているK16も激しい追いタックルでトライを阻止していました。J22の相手ラックをオーバーしターンオーバーしたプレーも素晴らしかった。

自問自答しながらそこに「気づき」を感じ化学反応のように自らを変化させ成長していく生徒たち。コーチはただその化学反応の「触媒」に徹するのみ。触媒コーチも気づかされる一日でした。

コーチの会社のグループ会社の創設メンバーでもある田坂広志氏は表記の本に、これから未来を切り拓いていく君には「二つの未来」が待っていると書いています。一つは「自身の未来」そしてもう一つは「人類の未来」と。これら二つの未来を切り拓くために最も大切なことは「志(こころざし)」だと言います。

与えられた人生において、己のためだけでなく、多くの人々のために、そして、世の中のために、大切な何かを成し遂げようとの決意。それが「志」だ。

司馬遼太郎も同じタイトルの本を生前書いておられ、知の世界を探求された偉人は通ずるところがあるのかもしれません。

小さい人たちは、いきいきと伸びてゆこうとしいています。少年少女が、いまの一瞬を経験するとき、過去や現在のたれとも無関係な、真新(まっさら)の、自分だけの心の充実だと思っているのです。荘厳なものですね。

君たちは、いつの時代でもそうであったように、自己を確立せねばならない。―自分に厳しく、相手にはやさしく。という自己を。そしてすなおでかしこい自己を。21世紀においては、特にそのことが重要である。自己といっても、自己中心におちいってはならない。人間は、助け合って生きているのである。