カテゴリー: '16-6年生チーム

三年生に足りないもの、『本当の勇気は「弱さ」を認めること』かもしれない

暖かな日差しが戻った土曜日の朝、一時間以上前にS14兄妹とS6が登校(S6は自宅からジョギングで一汗かいていました。Y17もロングランでぎりぎりセーフ)。行事や病気で欠席もありましたが、4チームが何とか作れる26人の出席でした。怪我で長期療養中のA11も漸く走る練習ができるようになり、本人も嬉しそうでした。

先々週の大会で悔しい思いをした生徒たちは、それぞれラグビーノートに自分たちに何が足りなかったのかを書いていました。共通している点は、練習でやってきたことが試合でできていなかった、1人でプレーして声を掛け合うことが少なかった、試合前にチームの仲間同士意思統一せず試合に臨んだということでした。今日のノート提出人数は9人。自分の伸ばしたいスキルや、弱い部分を真摯に分析している彼らは必ず伸びます。

生徒たちがそんな自分の弱い部分を打ち明けたり、チームにとって良い行いをしたときにビー玉を魚の形をしたワイン瓶(イタリアの大衆ワイン、ペッシェビーノ)に今日から入れていくことにしました。ただでさえビー玉好きの生徒たちが風変わりな鱗模様のワインボトルとセットになっていることで眼の色を変えて「欲しいな~」と口をそろえていました。この魚がビー玉あと1個で一杯になるところでリーチをかけ、善行を積んで一杯にした生徒がカラフルな魚を記念に貰えることにしました。今日はノート9人分の9個を入れて新たな企画スタート。それ以降の練習中の行いで増減したので、今日は13個になりました。1人の生徒がコーチの話しているときにタックルバッグに座って立てかけていた瓶を倒してひんしゅくをかったのでマイナス1。ミニゲームでは、T30がタッチラインに押し出されまいと踏みとどまりK16にパスしトライに繋がったプレー、M23がオフロードでY3にパスが繋がったトライ、H13も同じく余ったY3にパスしたトライ、快速男R26のライン際の快走を一発で仕留めたS6の低いタックル、K8のタックル→起き上り→ジャッカルとチームに貢献したプレーが沢山あり、魚の尻尾まで色がつきました。まだ軽いお魚をH9にワンナイトだけ預かって貰うことにしました。

ヒューストン大学ソーシャルワーク大学院の人気教授ブレネー・ブラウンが著した表題の近著では、長い期間をかけた研究を通して、信頼はほんのわずかな瞬間に形成され、ビー玉一個分ずつ積み上げられていくことがわかったといいます。魚(ワインボトル)の口に大玉が入らないように、信頼はじわじわとしか育まれないようです。折角積み上げた信頼も、昨今のレストランメニュー偽装問題のようにたった一つの裏切りで失われます。その様はワインボトルごと放り投げて割ってしまうこととどこか似ています。

『信頼は生身をさらすことによって生まれ、時間をかけ、手間をかけ、気にかけ、関わることによって育っていく。信頼は大がかりなことをやってみせることではなく、ビー玉を1個ずつ貯めていくようなものなのである』

生徒には、前回のスクール大会で優勝できなかったチームには「一人でやれる」というプレーヤーが多かったことを踏まえ、これからは、以前M19が言った「心強い」選手にみんながなることを目指そうと話しました。では、自分が心強いと思われるにはどうすればよいかな?生徒から手が沢山挙がり、「声を出している」、「仲間と思われる」といった答えに続いてなぜか「桃太郎」と言い出した生徒がいました。「桃太郎は一人で鬼を退治できたかな?」 笑っていた生徒たちが首を横に振ります。「きじ、犬、猿が助けた」「そうだね、桃太郎も水戸黄門のお爺さんもも一人では何もできないね。つまり、誰かの助けがなかったら悪い鬼や人を懲らしめることはできなかったわけだ」 桃太郎を直感的にイメージした生徒のおかげでこれから生徒たちが変化していかないといけない重要なことが浮き彫りになってきました。「完璧に強い人間はいない。どれだけ強く見えても弱い部分がどこかにある。仲間でもそう。自分の弱い部分を裸になってさらけ出すことで、仲間も心を開いてくれるんじゃないかな」

秋を通り越して冬になってしまった寒い時期には、ウォーミングアップに最適な鬼ごっこがいちばん。ということで久しぶりに「スポーツ鬼ごっこ」をコート2面に分けて行いました。5分間でどちらが多く相手陣地のお宝(ボール)をゲットできるかを競います。初めての生徒も楽しんで「おなかが減った」と感想を述べる生徒もいました。一汗かいたところで、走り込みながらパスを受ける基本練習からスタートし、キャッチができるよになったところで、隣のプレーヤーにパスを放るところまで行いました。パスを受けるときはボールが来る方向へ自分が真っ直ぐハンズアップの姿勢で取りに行くこと。引いてボールを受けたら身体が流れしまう。流れたままでボールを受け取れば、対面がディフェンスしやすくなり、圧力をかけられてしまう。この基本ができていた今日の早稲田は圧倒的な強さで慶応の強固なディフェンスラインですらズタズタにしていました。

次に、スクール大会の反省として1vs1の勝負で負けていた点を克服する練習をお父さん5名にコンタクトバッグを持っていただき行いました。お父さん二人がバッグを持って並んでいる隙間をしっかり踏み込んで抜いていき、後方に待ち構える2人目の相手とファイト→ドライブし、フィニッシュはロングプレイスで「ウルトラマン」の飛行ポーズ。これができたところで、小刻みな左右のステップを入れて対面のタックルポイントをずらす工夫をしました。即座の習得ができるようになる年齢を間近に控えているだけあって軽快なリズムで強いヒットを見せてくれました。

明日もこの基本から応用へと移行する練習を行います。あと2回の練習で実際に競技場に立ち新たな試練に挑むことになる三年生です。そんな彼らにはブラウン教授が100回以上繰り返し読んだという有名な演説がぴったりです。

ただ批判するだけの人に価値はない―強い人のつまずきを指摘し、やり手ならもっとうまくできたはずだとあげつらうだけの人には。称賛に値するのは、実際に競技場に立ち、埃と汗と血にまみれながらも勇敢に戦う人だ。あるときは間違いをおかし、あと一歩で届かないことが何度もあるかもしれない。何をするにも間違いや欠点はつきまとう。それでもなお、ことを成し遂げるためにもがき苦しみ、情熱に燃え、力を尽くし、大義のために身を粉にして励む人こそ偉大なのだ。順風ならば最後には勝利に輝くだろうし、最悪の場合、失敗に終わるかもしれない。だが彼らは、少なくとも果敢なる挑戦(daring greatly)したのである。(米国元大統領セオドア・ルーズベルト)

コーチは信頼を積み上げておく魚のボトルを空にする作業にとりかかるとします。

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